オンリーワンとなる賃貸住宅・森建築設計 森健一郎さん


 
近隣の賃貸住宅にはないもの、地域の賃貸住宅にはないもの、できれば日本全国でオンリーワンとなる賃貸住宅を建てることができれば安定した賃貸住宅経営を行うことが可能です。
賃貸住宅を得意としている森建築設計 森健一郎さんに賃貸住宅について伺いました。

お話を伺った建築家

 

ユーザー 感共ラボの森 森健一郎 の写真
神奈川県横浜市中区海岸通4-22-302
045-263-6674

貴社が賃貸住宅を手がけるようになったきっかけがありましたら 教えて下さい。

  
務めていた設計事務所を激務のあまり退社し再就職するか独立するか考えていた時に、退社した設計事務所勤務時に設計に携わった建て主様から再設計依頼をいただきました。
 
この依頼により事務所登録を行い成り行きで独立することになったのですが、この時の依頼が外人向けの賃貸住宅でした。
 
建て主様は横浜山手で外人向け賃貸住宅を6棟所有していた方で、私が受けた依頼が7棟目、その二年後に8棟目となる外人向け賃貸住宅のご依頼をいただくこととなったのが賃貸住宅を手掛けるようになったきっかけです。
 
このとき手がけた外人向け賃貸住宅2棟は延床面積230㎡のRC造(鉄筋コンクリート造)で、30歳手前で独立した私にとって大きな経験となりました。
 
この建て主様からは2007年に竣工した「藤沢市辻堂の賃貸住宅群」の建て主様をご紹介いただき、大変お世話になり今でも賃貸住宅のメンテナンスなどで関係が続いています。
 

賃貸住宅の設計で注意しているポイントを教えて下さい

  
設計のポイントをご説明する前に賃貸住宅で大切な大きな前提があります。それは経済性です。
賃貸住宅である以上満室となりなおかつ目標とする収支効率を満たす必要があります。
平面計画や内外デザイン、内外仕様やエントランスデザインなど全ては工事費に関わり収支効率に影響します。
 
また建て主にとっては竣工から満室になるまでの期間は収入が少ないのにローン返済が発生するので、竣工後ほどなく満室となるような営業テクニックと人気賃貸住宅となるための特色や魅力を生むプログラムが重要です。
 
さらに20年後、30年後の姿を考え設計することも重要です。
 
私が賃貸住宅で大事だと考えているのは、このプログラムと収支効率を考慮したバランス感覚です。
計画の初期段階で、どのような人に住んでもらいたいのか、賃料設定はどうするか、20年後・30年後にはどのような社会情勢になっているのかなどを建て主様とよく話し合います。
そしてメインターゲットと想定賃料を決め、空室率と運営諸経費を考慮した収支計画書を作成し建設予算を割り出します。
 
ここでようやく平面計画や内外デザインを検討していくのです。
 
この設問に対する私なりに答えをするなら『非日常性の演出』です。
住宅では非日常性は1割、日常空間が9割でいいと考え設計しています。
賃貸住宅では内覧時に他の賃貸住宅との違いを感じるインパクトも必要なので非日常性を2割くらいに設定して設計しています。
2割って少ないように感じるかもしれませんが非日常空間が多すぎると住み疲れてしまいます。
ですから賃貸住宅ならば2割くらいで丁度いいのです。
 
平面計画・外観・共用部分・インテリア・エントランスなどの設計ポイントはそれぞれ単独に論じるのではなく、収支効率(建設費)とターゲット層を考慮した結果なのです。
同じ立地条件でも建設費とターゲット層が変われば設計内容はまったく違ったものになります。
  
以上の事柄をご説明したうえで各項目についての一般論を解説します。
 

平面計画

 
入居者に狭っ苦しさを感じず広々と使ってもらう、また入居者の趣味嗜好に応じてパーテーションなどの区画で入居者好みの空間にできるよう、なるべくオープンな平面計画にすることが多いです。特に首都圏では、一昔前の賃貸入居者と違い今の世代はセンスがあるのでオープンな空間のほうが好まれる傾向があります。
 

外観

 
どこか一点、「あっ良いな」と思わせるポイントを用意するよう考えています。「すごい!!」ではなく
「あっ良いな」程度の感動を与えることが重要と考えます。「すごい!!」では日々の生活の中では見飽きてしまうので「あっ良いな」のほうが効果的です。ターゲット層によっては「すごい!!」の方が効果的な場合もありますが、一般的には品がある程度のほうが受け入れられやすいです。
 

エントランス・共用部分

 
私が手掛ける賃貸住宅は小規模なものが多いので我が家に帰ってきたような安心感を感じてもらえるような空間を心がけています。また共用部分に多額のメンテナンス費がかかるような仕様は収支効率を大きく悪化させるのでなるべく、メンテナンス費のかからない仕様で設計するようにしています。
 

インテリア

 
平面計画にも通じますが、あまり作り込まず、でも手作り感のあるインテリアにしています。時には入居者自らが仕上げ変更できるような壁を用意したり、IKEAや無印の家具を設置しやすいようなモジュールで設計することもあります。押しつけがましいインテリアではなく入居者の好みで応じて自由に作りかえられるような空間ですね。
 

 

近隣の賃貸住宅と差別化するために意識していることがありましたら 教えて下さい。

 
これは大手の資本ではなく個人の建て主が建設する賃貸住宅で最も重要な事です。
 
メインターゲット層を設定しその方々の心に響く特色・魅力・差別化を考える事です。
どのような特色付けをすればいいという方程式のようなものはありません。
立地条件、地域性、周辺の賃貸住宅、建設予算、人口統計や世帯数推計、メインターゲット層などにより必要な特色は変わります。
 
近隣の賃貸住宅にはないもの、地域の賃貸住宅にはないもの、できれば日本全国でオンリーワンとなる賃貸住宅となるよういつも意識しています。
 
横浜山手では外人向け専用賃貸、辻堂ではハイクラスを意識した日本的なリゾート感、賃貸長屋「sora」では専用パティオを組み込んだ複雑な内部空間、世田谷代田計画では古い柱や梁を表しにした昭和を感じる懐かしさ、いままで手掛けてきた賃貸住宅ではそれぞれに地域にはない特色を持つよう設計してきました。
 

 

建築業者ではなくて貴社に賃貸住宅を依頼するメリット・デメリットを教えて下さい。

 
建設業者の本業は建設業です。
一般的な賃貸住宅は建設できますが、日本全国でオンリーワンの特色を持つような賃貸住宅を提案する提案力はありません。
また建設業者は建てたら終わり、しかも建設費が高い方が利益も大きいので低コストで建設できるような提案はしません。
 
その点、森建築設計は収支効率を考慮した総予算から導き出した建設費で、ニッチな層にアピールする特色を考え、20年後・30年後にはどうするのかということも話し合いながら作り上げることができます。
 
デメリットは設計から竣工までの期間が建築業者よりも長いことと、予算確保は建て主自ら行わなければいけないということです。
設計~竣工期間は建築業者よりも4か月ほど長く、金融機関の紹介はできますが建築業者のような手とり足とりフォローするということはできません。
 

賃貸住宅に向いている土地というのはどういうところでしょうか?

 
日本の総人口は減少しており、世帯数は単身者世帯があと15年ほど増加しますがその後減少していきます。
単身者世帯数が増加するのも首都圏の話で地方ではすでに世帯数も減少傾向にあります。
つまり一般論として賃貸住宅は安心できる事業ではないのです。
このような情勢で賃貸住宅に向いている土地を考えると、駅に近く良質な環境の土地です。
 

逆に賃貸住宅に向かない土地というのはどういうところですか?

 
駅から遠い、駅に近すぎて物騒で騒がしい、線路脇、高速道路や幹線道路脇、山の上、高架下、など一般的に賃貸住宅に向かない土地は沢山あります。
自分自身が住みたいか住みたくないかを考えればいいでしょう。
 
たがこれは一般論であって、短所を逆手にとって魅力に変えることも可能です。
 
ローン審査が通らず実施に至らなかった線路脇の賃貸住宅計画がありましが、この計画では電車を眺めるための窓を設けることで鉄道好きの興味を引く提案をしました。
どのような可能性があるか、ぜひ一度相談してみてください。
 

賃貸住宅を経営したい方になにかアドバイスがありました教えてください。

 
低金利政策が続いていることもあり、金融に投資するなら賃貸住宅に投資したほうが利回りがいいと考え相談にいらっしゃる方が最近多いです。
 
一般に、土地を新たに購入して賃貸住宅を建設しても事業として成り立たせるのは不可能です。
借地権の土地ならば成り立つ可能性が少しあるという程度です。
 
もし成り立つなら私自身が賃貸経営していますし、資本力のある大手がもっと賃貸経営に乗り出しているはずですよね。
表面利回りは最低8%、実質利回り3%確保できるか、計画段階で手抜かりなく確認し計画を進めなくてはいけません。
また長期賃料保障などをアピールしている業者も多いですが、長期賃料保障に建て主のメリットはほとんどありません。
 
この点もよく勉強してから計画を進めるべきです。
 

森建築設計 森健一郎さんの賃貸住宅設計事例

 

画像 建物の名称 紹介文
4軒の賃貸長屋 sora

本計画は平成22年度 神奈川建築コンクール住宅部門優秀賞を受賞いたしました。

4軒の賃貸住宅群

計画地は藤沢市辻堂です。駅から遠い立地であること、海に近い(自転車で5分)という立地であることから「日本的な大人のリゾート」をコンセプトに計画を進めました。建て主様の希望通り、付近相場の2割り増しの家賃で貸す事ができました。

記憶が繋ぐ集住ハウス

柱や梁、木製引き戸は昭和の雰囲気を伝える貴重な財産だと感じました。この雰囲気を生かした、昭和建築や古民家に安らぎや魅力を感じる方々にアピールできる賃貸住宅にしたいと考えました。

鳥小屋賃貸

賃貸室は2部屋つくりました。それぞれの床面積は26m2(7.8坪)です。

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