ハートホーム宮野

●設計事例の所在地: 
山口県山口市
●面積(坪): 
1174.4
●建物の種類(大分類): 
医療・福祉施設
●メインの画像: 
●メイン画像の説明文: 

サービス付き高齢者向け住宅、特別養護老人ホーム、ショートステイの複合建築です。木造耐火建築物でありながら外壁に木ルーバーをつかっています。トイや配管、屋外機などを隠す機能もあります。白い横ストライプ状のサイディングはサイディング特有の目地を隠し、フラットでミニマムな壁面に見えます。ルーバーの繊細さとミニマムな白壁のコントラストによるモダンな外観が特長です。

撮影:北嶋俊治

建てる前に依頼者が悩んでいた事・ご希望: 

敷地は交通量の多い道路に挟まれた変形旗竿地で、既存高齢者福祉施設を撤去することなく建設する必要があった。変形地で1フロアにケアユニット(9室+リビング)を3ユニット配置することが可能なのかどうかご心配されていた。また、規模が大変大きくなるが、環境問題への法人の配慮として、地場産の木材を利用した木造建築を希望されていた。

依頼者があなたに依頼した決め手: 

過去に同じ法人の施設「ハートホーム平川」を魅力的なデザインと運営に配慮した設計によって、大きな信頼をいただいており、引き続きお声掛けいただいた。

●建物の紹介文(依頼者のお悩み・ご希望を叶えるために工夫した点・採用した建材など): 

「ハートホーム宮野」はサービス付き高齢者住宅、特別養護老人ホーム、ショートステイの機能を持つ高齢者住宅の複合建築です。お施主様の強い希望で、通常はRC造でつる規模の施設をあえて木造によって実現することで、二酸化炭素の固形化による環境への貢献を行いたいという依頼者の強いご希望に対し、国庫補助への申請を勧め、国土交通省による木のまち整備促進事業補助金事業による国庫補助に選定され、木造軸組耐火構造にとしては国内最大の規模で実現しました。
◯雁行平面:大きな建物ですが、ボードで隠されてしまう耐火木造の欠点を補うために、雁行した平面を採用することで書院建築に似た木造らしい空間構成をつくりました。また、隣接する建物の間に三角形の程よい距離と変化に富んだ外観を作り出しています。
◯外壁は白のリブ付きサイディングとすることで、目地を消しフラットな面に対し、窓の面する壁を木製ルーバーとすることで、モダンで引き締まった外観としました。開口部周りは彫りの深いダークグレーの大枠がアクセントとなり、ここにプランターを置くことができます。
◯中庭と色:低層にしたことで階ごとの面積がお大きくなりました。そこで、光と風を取り込む3箇所の中庭を設け、中庭に面する外壁を歌舞伎の緞帳色(黒・オレンジ・緑)とすることで、それとなく「和」が感じられるようにしました。これらの色は植栽とも相性が良く、現在は育った植栽から色が垣間見える理想的な状態になっています。
◯内装:床を全て畳風のシート貼りとし、要所に木製のモダンな障子によって視線が見え隠れするようにしたことで、外部の色と相まって透明間のあるモダン和風のインテリアとしました。要所に設けた作り付け家具はインテリアと一体化したデザインとしています。
◯光と影:吹き抜けなどダイナミックな建築空間が無くても良い空間はつくれます。上記の工夫によって太コントロールされた太陽光が室内を豊かに照らしだし、ています。複雑な平面が陰影と奥行き感を生み出しています。

依頼者の声: 

変形旗竿地に3000㎡超えを木造で建てるといった困難を完結した私たちの設計に対し、「木の質感を表に出すことができない木造耐火建築に対して、意匠的に解決をしていただいたおかげで、大変満足している。」「とくに変形地に対して、雁行平面や中庭による卓越したプランニングによって大変魅力的な内部空間を実現していただき感謝しております。」といったお言葉をいただきました。メディアなどにも取り上げられ、他の法人の見学者も多く、誇りに思っていただいております。

その他の画像: 

◯中庭に面した3階テラス
高齢者が手軽に自然を感じられるように。そこかしこにテラスを設けています。テラスの効果的な配置は私のデザインの特徴でもあります。

撮影:北嶋俊治

◯窓側の外壁
木ルーバーの外壁が雁行した壁面によって連続しています。雁行平面によって生まれる三角形の空地は隣接する建物との間の圧迫感を和らげるとともに、建物の大きさを小さく見せることで周辺環境にも配慮したものです。
これだけ大規模な施設で外部を木ルーバーで覆うことは稀ですが、コンクリートとと違う魅力があります。木は経年変化グレーに変わりますがその変化でより美しさを増していくように考えています。
撮影:北嶋俊治

◯中庭
一方、中庭には色があります。日本の伝統色で歌舞伎の緞帳につかわれている、オレンジ、黒、緑を使うことで、モダンと伝統を融合させる、普段あまり外に出歩けない高齢者のために光や風や緑による自然の恩恵とともに、視覚的に豊かな環境を作り出しています。これらの3色は植栽された緑との相性もよく、現在では写真より繁茂して、緑の合間から色が見える状態になっています。

撮影:北嶋俊治

◯障子スクリーン
廊下とリビングを隔てる障子のスクリーンです。気配を伝えつつ、領域を穏やかに隔てるものです。

撮影:北嶋俊治

◯リビング
中庭のオレンジ色反射した太陽光が穏やかに空間を包みます。木製の照明器具や家具もインテリアに合わせて選定しました。床は畳風のシートを敷き詰め、モダンでありながら和風のテイストが感じられるインテリアとなっています。

撮影:北嶋俊治

◯ラウンジ
ラウンジの一角に入れ子状の空間をつくりました。障子と木ルーバーで完全に閉じることもできます。ルーバーの裏にはお茶を用意できる小さな流しや収納もあります。
大きな部屋に入れ子の箱とテラスを配置することで、用途の多様化とともに空間に変化を与えています。吹き抜けなどの開放的な空間が無くても、このように魅力的な空間をつくることができます。

撮影:吉田明弘

設計者

ユーザー 株式会社ヨシダデザインワークショップ 吉田明弘 の写真
オフライン
Last seen: 12時間 12秒 前
登録日: 2015-03-16 14:11

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