渡辺篤史の建もの探訪ー3.5階建て”仮想フロア”のある家(谷尻誠+吉田愛、SUPPOSE DESIGN OFFICE株式会社)

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建もの探訪ファン
感想: 

ベランダのバラも、今年は元気にたくさん咲いた。
近所のお友達にお花ひとつをお裾分け。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「3.5階建て”仮想フロア”のある家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/18
都心暮らしのための家。
 
            ◇ ◇ ◇
 
シンプルが好き。とにかくシンプルにすっきりと。
奥様がそう説明されたキッチンは、一見キッチンスペースとも思えないほどに
設備がスッキリと収められ、家電や器具、食器もすべて格納されている。
寝室のカーテンも、雨戸みたいに収まるしかけがある。
浴室壁に取り付けられた設備のリモコンには白いシートを張って細工し、
ボタンに印字された文字をも隠してしまう徹底ぶり。
細かなところまでとても丁寧に考えられていて、
アンバランスなものや目にうるさい形がすっかり整えられていた。
 
シンプル、すっきり。私も好きだ。
道具でも、インテリアでも、着るものでも。
手入れがしやすくて清潔に保てるし、身の回りのものがすっきりしていたら
頭や心を平静に保てる気がするからだ。
そして、何か素敵なもの、鮮やかな色のものだったり美しい形のものだったり、
個性的な雰囲気を醸すものだったりに出会った時、
それらを大切に楽しめると思う。
 
このお家は渋谷神宮前に建つ。
エネルギーに満ち満ちた、都会真ん真ん中での暮らしのための家。
渡辺篤史さんは、「ここまでやるか、というデザインですね。」
とコメントしていたけれど、そうして丁寧に追求したシンプル、すっきりの形は、
この都心暮らしにとって、とても意味のあるこだわりだと思った。
 
シンプル、すっきり。
しかし、撮影用に片付けているにしても、家の中にあまりにも物がなく、彩りがなくて、
ちょっと心に寂しいような印象をも受けた。
物も経験もたくさん蓄積してこられたであろうご夫婦のお宅。
この建ものでの生きた暮らしの様子を見てみたい。
 
            ◇ ◇ ◇
 
このお家には、外を見渡せる窓がない。
2階のリビングで感じる「外」は、天井近くにぐるりとある窓、
そして3階のグレーチングバルコニーを通って届く光と風のみ。
3階の寝室でも、バルコニーの高い壁の上に空を仰げるだけ。
こんなところも都心の生活のための建てものだなあと思う。
もちろん、周囲を囲まれている立地上、いたしかたない形だろう。
でも、街でエネルギーいっぱいに活動する都心での生活には、
これくらいがちょうどよいのかもしれない。
外とはちょっと距離を置いて、静かに過ごす家での時間。
 
タイトルにある”仮想フロア”考え方がまた、そんなお家にとても生きていて
すごくいいなと思った。
箱の中にある箱の中で暮らすようなイメージだろうか。
安心感のある建てものだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
しかし、建築費8,000万円って、、、、すごいな。
その価値が、分かるような、分からないような。。。