渡辺篤史の建もの探訪ー古材テイストのW中庭住宅(佐藤浩平、佐藤浩平建築設計事務所)

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感想: 

お散歩途中、みちばたのお花を摘んで歩いたらこんなにいろいろ。
アブラムシもたくさん連れてきてしまったけれども。。。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「古材テイストのW中庭住宅」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/15
中庭は、とても豊かだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
がらーんと広い、そんな印象があった。
2つの中庭の間に、リビングダイニングである「広間」がある。
中庭は、ひとつは砂利敷き、ひとつは広間の床と同じタイル張りの中庭テラス。
広間と中庭テラスの間の引き戸を開ければ、3間ひと続きの大きな部屋のよう。
広間には、ダイニングテーブルがぽっかりどっしりと置かれていた。
 
子育てを終えたご夫婦と息子さんの大人3人が暮らす。
友人などを招いて賑やかな時間を過ごすことも多いようだけれど、
大人3人の日常には、大空間の中に静けさがしっとりとあるのだろう。
その雰囲気がとても魅力的なのだ。
 
背後も庭、目の前も庭だから、一人でダイニングテーブルについたら、
なんだかちょっと背後に壁がほしいような、 落ち着かないような気もする。
けれども、このお家にはこの大空間をじっくり味わう魅力的な場所がいくつもあって、
心底ゆったりした気持ちで、心を落ち着けることができそうだった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
魅力的な場所のひとつは台所。
台所のカウンターに立って広間を見渡すと、
中心の広間、左右の中庭テラスとがぐーんと見渡せる。
ここ、いいですね、と、台所に立った渡辺篤史さんは、
しみじみと、とてもしみじみと感嘆をもらしていた。
建築家が、この眺めのことをどれくらい意識して設計された分からないけれど、
台所って、こういうふうに眺める場所だよなあと改めて思った。
今私が住んでいる部屋も対面式のキッチンになっているけれど、
料理をしながら、片付けをしながら、ちょっと一休みとチョコレートをつまみながら、
いつもいつも、見渡しているなあと思う。
家族やお客さんの様子をみたり、コミュニケーションをとったりということだけでなく、
窓辺に立って外を眺めるみたいに、なんとはなしに眺めて
心を落ち着かせたり、考え事をしたりしている。
私も、家を建てる時は、壁付きのキッチンでも、こんな対面式のキッチンでも、
はたまた独立した部屋のようなキッチンでも、
どんな形だっていいけれど、よい眺めにしてくださいと言おうと思う。
台所は、トイレみたいなもので、落ち着く場所なのだ。
 
魅力的な場所のふたつ目は、台所の対岸で広間を見渡せる位置に据えられた書斎。
Webページに説明がある通り、まさに「広間から付かず離れずの位置」。
個室ではないけれど、ぐるり書棚に囲まれていて、
とっぷり自分の世界に浸れるし、それでいて広間の和に参加してもいられる。
本を読みながら、視界は時々大きな空間の広がりを楽しむ。
そういう感覚が、この家の台所の居心地とすごく良く似ている。
 
砂利敷きの中庭に面した和室もまた、そんな魅力的な場所のひとつだ。
ここは広間からは切り離された独立した場所だけれど、
ここから眺める中庭と広間は、どこかちょっとステージのような、
広間もまた庭のような、不思議な広がりのある眺めとして楽しむことができる。
 
そして2階の部屋からも、広間と中庭を見下ろすことができる。
息子さんがこの部屋を使っていらっしゃるのか、見下ろせる絶好の場所にマットレスを据えて
寝床が設えてあった。
なんだか、すごくいいなと思った。
寝入る時もまた、ぐるぐるっといろいろ思いを巡らせて、心を落ち着かせる。
そんな時に、広間と中庭をぐるっと見下ろせるのだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
友人などを招いて賑やかに過ごすことも多いというこのお宅。
訪れた人は皆、思い思いに歩き回ったり、腰を下ろしたりしながら、
楽しい会話や食事、そしてこの空間を楽しんでいくのだろうと思う。
この空間の広がりが、気兼ねなくのびのびと過ごしてね、という
何よりのおもてなしなのだなあと思う。
 
広いことは、やっぱり豊かなのだ。