渡辺篤史の建もの探訪ー柔らかな階段でつながる7坪の家(佐々木達郎、佐々木達郎建築設計事務所)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

黄色い大きなおみかんがたっぷり実家から届いた。
祖母が今年も方々からいただいたという。
毎日せっせと皮むいて、来週はマーマレードジャムを作る予定。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「柔らかな階段でつながる7坪の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/14
小さなとってもかわいいお家だった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
建築面積7坪の狭小住宅。小さなお家。
つみきの1片を、ぽちょん、と置いたみたいなかわいらしさが、
とっても魅力的な佇まいだ。
絵本「ちいさいおうち」のちいさいお家の絵みたいなかわいさだ。
昨今、かわいい、カワイイ、と世の中にはたくさん「かわいい」が溢れているけれど、
こういうものに言う「かわいい」が、私はとっても好きだ。
清潔な身なりの小さな人が、正直に、笑顔で立っているみたい。
 
「健康的でかわいい家づくり」がこの家づくりのテーマとなったそうだけれど、
まさに、この言葉がきちんと形になった建ものだと思う。
なんだか、すごく素敵だったのだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
玄関のドアを開けると、そこは台所と食堂。
スキップフロアになった各階。
食堂から階段を上がってリビング、階段を上って子供室、階段を上って屋上テラス。
タイトルの通り、ぐうーんと背伸びをするように、階段が私たちを空へとつなげてくれる。
 
食堂から階段を下がってお風呂とトイレ、階段を下がって主寝室。
ふうぅぅぅ、と深く息を吐くように、階段が私たちを大地に下ろしてくれる。
 
そういう感覚がすごく劇的だ。
建築家は、ホテルや商業施設も手がけていらっしゃる様子。
なるほど。そういう非日常の興奮や緊張感をも、この建ものには感じられる。
 
            ◇ ◇ ◇
 
玄関のドアを開けると、そこは台所と食堂、
というのは、ちょっとびっくり。
玄関というよりは勝手口みたいだけれど、それがすごく温かい。
台所は、お家の中でもとても大切な場所だけれど、舞台裏みたいなもの。
そこで人を迎えるということが、とても公平で正直な感じがする。
立ち寄ってくれた人に、どうぞどうぞお茶でも一杯、とすぐに座ってもらえる。
そして何より、帰宅した家族がお家に足を踏み入れたと同時に、おかえり、を言ってあげられる。
 
            ◇ ◇ ◇
 
狭小住宅に住むというのは、すごく覚悟のいることだ。
小さなワンルームで社会人生活を始めた私は、そのことを実感を持って想像することができる。
使ってみたい、やってみたい、着てみたい、よく分からないけどとにかく欲しい。
そういう欲求に真摯に向き合って、ほおっておけばどんどん増えるものと闘わなくてはいけない。
時には、嬉しいはずのちょっとしたプレゼントですら、嬉しく思えない時もある。
我慢も工夫もたくさんしなくちゃいけない。
そういう生活は、やっぱりそれなりにストレスもある。
 
このお家は、建ものと合わせて暮らしぶりもとっても健やかでかわいかった。
お道具や家具、窓辺や棚、壁のちょっとした飾りはどれもとても素敵で、
おもわず顔がふわりとほころぶ。
そしてクローゼットや雑貨類の収納も美しく整理されていて、
表面的に片付いているだけでなく、丁寧に核のある暮らしをされているのだと思う。
小さなお家での生活は、余分なものを削ぎ落さなくてはいけないけれど、
それを健やかにされているのだなと感じた。
ゆったりと、楽しんで。
 
この小さなお家に感化され、我が家も次のお休みには春の削ぎ落し総点検をしよう。
ぐるりお部屋を見回した。