渡辺篤史の建もの探訪ー快適!土間とスノコ床の家(菰田真志・菰田晶、有限会社 菰田建築設計事務所 一級建築士事務所)

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建もの探訪ファン
感想: 

あなたみたいなチューリップでしょう?
昨日、お華の教室でチューリップを生けた。
先生は、花が小ぶりの可愛らしいピンクのチューリップを選んでくださっていて、
真っ先に娘に見せてくださった。
チューリップは今日も玄関先ですっくとがんばっている。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「快適!土間とスノコ床の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/10
このお家は、何かしっくりとこない。
どこか無理のあるようなつっかかりが、心に残ってしまった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
私がこのお家に住む子供だったら、居場所に迷ってしまうような気がするのだ。
「かーさんがいる2階のリビングダイニングで遊びたい。
でも、心おきなくおもちゃを広げられるのは1階のフリースペースなのよね。
2階は大人のお部屋だから、たくさんおもちゃを持ち込んで置いておけないし、
スノコ床からおもちゃを落っことしちゃいそうでちょっと怖いのよ。
1階のフリースペースには、おもちゃもたくさんあるし、広いから自由に遊べるけれど、
あけっぴろげで、ひとりで遊ぶにはなんだか心細いのよ。
玄関が近いから、ピンポーンていう度になんだかドキドキする。
かーさんは2階でちょっと遠いもの。」
 
私は小さな頃、1階の居間だけでなく2階の子供部屋でよく遊んだ。
子供部屋は、母の目が届く場所ではなかったけれど、
人の出入りがある1階に母がいるという気配を感じられる物音は、温かな安心感があった。
そんなふうに改めて思い出すことができる。
居心地がいい場所、安心感のある場所ってそういう場所なのではないかと思うのだ。
大人がちゃんと目を気を配り、外との緩衝剤になってくれている、守られた場所。
母という立場になった今、私が日常的にいる場所より奥で遊ばせてあげたいと、
直感的に思う。
特にこのお家のフリースペースとされる遊び場は、
部屋として独立したものではなく、一面が扉や仕切りのない舞台のような形。
すごく開放的な空間になっている。
台所やリビングからは目を配れない位置関係にあるだけに、無防備な印象を受ける。
就学前の子供を遊ばせるには、なんだか心もとないし、
子供にとっても居心地が悪いような気がするのだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
このお家には、ご主人が趣味のスノーボードや自転車の手入れをするための空間として、
1階に土間スペースが設けられている。
ただ、その作業スペースが玄関から2階に上がる動線上にあるのもちょっと気持ちが悪い。
常に動線を遮られるわけれはないし、作業中であっても人一人通るスペースは
それなり確保されそうだけれど、通路が作業場になるのはなんだかちょっと美しくないと思う。
 
上足と下足の区分けもどうだろうか。
寝室は土間から一段高くなっていて、寝室の扉の前で靴を脱ぐ形になる。
その分、穴蔵みたいな心地よさもありそうだ。
でも、お家の中で上足、下足にと気を配るのはめんどうくさい。
きっと私なら、靴やサンダルなぞには履き替えず、それらを飛び石のようにいつも踏んづけて、
階段から寝室へ、階段からフリースペースへ、フリースペースから寝室へと移動するが日常、
ということにしてしまうだろう。
どうだろう。このお家ではそんなことはないのかしら?
それならば、階段の手前に、寝室とフリースペース、階段とを結びつける橋のように
スノコ床をつけても素敵だと思う。
移動しやすいし、第2の玄関のような安心感が出ると思うのだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
なんだか今回は、えらそうなことばかりになってしまった。
身を置いてみると、こんな心配や気持ちの悪さはちっとも感じないのかもしれない。
丁寧にやりとりを重ねて計画されたお家のはず。
本当のところは、ご家族が感じる心地よいや楽しい、家族ひとりひとりの日々の動きに、
建ものはしっくりと寄り添っているのだろうな、とも思う。
 
でも、こんな直感的な感想も、ありましたとさ。
藤川家の皆様、住み心地はいかがですか?