渡辺篤史の建もの探訪ー”好き”をつめこんだ家(西久保 毅人、一級建築事務所 ニコ設計室 株式会社)

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感想: 

小さな赤い靴が、我が家の玄関に並んだ。
まだまだお外は寒いけれど、散歩へ連れ出す。ヨチヨチ、ヨチヨチ。
彼女の世界はまた一つ、広がった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「”好き”をつめこんだ家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/5
個性がぎゅっと押込められた、濃いお家だった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
N字型の屋根、玄関ホールから2階の吹き抜けまで立ち上る本棚、
大胆な色に塗られた壁、印象的な色のタイルが使われたキッチンと浴室、
弧を描く間仕切り、鉄の階段、、、。
建築家はブログで、「長谷川邸」ではなく「長谷川さんち」と書く。
色とりどりのマジックを持って画用紙広げて、楽しいことをたくさん考えたのを
大人がぴしっと技術を持って形にしたよう。
「長谷川さんち」、そんな感じだ。
 
ヴィンテージバイク、車、洋服、ギター、アジア系の雑貨、
くまさん型の座椅子、ヨーロッパ風のベッド、、、、。
長谷川夫妻の趣味と好きの世界は、多趣味、多彩、とでもいおうか。
一言では言い表せないまぜこぜ感。
 
そんな建築家と長谷川夫妻それぞれの色がぶつかり合って、混ざり合って、
ぎゅっと結びつきあって、一つの新しい世界が生まれた。
それはそれは独特な雰囲気のある、とにかく楽しい建ものだ。
 
建築家と住む人との関係、そして出会いの不思議のようなことに、改めてドキドキする。
夫婦みたいなもので、出会うべくして出会ったという気がする。
そしてまた、建築家とお家を作るというのは、好きなブランドの洋服を選ぶ
というのとよく似ているのだな、と思った。
その人、その家族らしく選んで、十人十色の着こなし方、住みこなし方になる。
やっぱり、お家づくりは本当にワクワクするものづくりなのだと思える。
  
            ◇ ◇ ◇
 
長谷川夫妻は、ご主人様は音楽、奥様はバイクと洋裁、とそれぞれに趣味があって、
この家には、それぞれを楽しめる部屋がある。
ご主人様のお楽しみの空間に奥様は、奥様のお楽しみの空間にご主人様は、
どんなふうに足を踏み入れるのか、どんなふうに楽しみを共有するのか、
ちょっと興味深い。
こんなふうに贅沢に趣味部屋があったら、それぞれバラバラに過ごす時間が
多くなってしまうのじゃないかとも思うのだ。
 
今は小さな娘との生活に右往左往、
好きなこともかなか本腰を入れて楽しめていない私だけれども、
家族それぞれの好きなことや趣味を、これからどんな時間や空間の中で、
家族みんなが共有して楽しんでいけるか、そのことに思いを巡らせ、
とても楽しい気分になる。
 
家族それぞれの”好き”。
渡辺さんの言葉を借りるならば、こんなお家が全部受け入れてくれる。