渡辺篤史の建もの探訪ー築140年の蔵を移築再生(大沢匠、(有)O設計室)

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感想: 

新しい年。
今年は久しぶりにスケジュール帳を買ってみた。
本当は4月始まりの方が実用的なのだろうけれど、この新しい嬉しさは、
やっぱり1月始まりに勝るものはないと思う。
  
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「築140年の蔵を移築再生」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/49
「大正レトロモダン」をテーマに、見事に住宅に再生された蔵。
駆使された左官、大工技術も素晴らしくて、センスのよさも光る。
感動の建ものだった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
洋風の玄関を入って正面には、手すりに素敵な彫りが施された階段がある。
その階段を上ると、約28畳というワンルームが広がる。
立派な棟木に見守られ、どっしりとした壁に囲まれて、温かな氣に満ちているような大空間。
そしてそこには、この家の主によってひとつひとつ丁寧に選ばれ、としてここへやってきた
古い家具や装飾、道具たちが、ぴたり、ぴたりと場を埋めるように置かれていた。
リビング、ダイニング、台所、ワークスペース、、。
素敵なものたちによって、ワンルームはそれぞれの「暮らしの場」に区切られていて、
とても生き生きとした毎日が感じられた。
 
1階には寝室に和室がひとつ、として浴室。
壁紙やタイル、襖がそれぞれの場所でとても魅力的に空間に色を添えていて、
ぐっと落ち着いているのに心躍るような楽しさが素敵だった。
 
こうして思い起こしながら私の頭の中でリンクしたのが、ハウルの動く城の城だった。
大正レトロモダンというテーマからくる内装の雰囲気、ということもあるかもしれないけれど、
この建もの、そしてその空間が、生き物のような感じがした。
何しろ140年も生きている建ものだから、何かが宿っていたっておかしくないし、
建ものが吸収してきたエネルギーを考えたら、今にも動き出したって驚くこともないと思う。
その生きた感じも、ぬおーーっというのではなくて、
ごそごそ、こちょこちょ、ぐるぐる、時に楽しく生きている感じ。
 
素敵な「再生」がなされたのだな、と、心に迫るものがあった。
 
            ◇ ◇ ◇
  
「住みつなぐ家」
この家を担当したO設計室が掲げる家づくりだ。
「家は自動車のような耐久消費財ではないはずです。」とWebページの説明は始まる。
 
建てものや土地の味わいが格別な祖父母の家や実家には、
将来もたぶん、仕事の関係で物理的に住みつなげないという残念さが今、私の心にある。
そしてこれから家を建てることを考えるにつけても、
娘は継がない私と夫1世代のための家になるのだろう、ということもよく考える。
 
家も、もっと小さくて身近なものたちも、
私が手放さねばならなくなった時、私が使えなくなった時、
ゴミになるのでなくて、誰かが同じようにいいね、と思って手にしてくれたら素敵だと思う。
私もだれかの、いいね、をたくさん私のいいね、にできたら素敵だと思う。
 
「住みつなぐ家」。
この家づくりの考え方は、私の心の中にある物に対する思いや、
最近よく考える家のことに響くもので、時間をかけてじっくり考えてみたいと思う。