渡辺篤史の建もの探訪ー都心の8坪 国産杉・板倉の家(安藤邦廣、里山建築研究所)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

こんな、寒い季節にわざわざしなくても。
年末のお掃除のこと。
汚れをためないように暮らそうと思っていても、たまるものはたまるもので、
この季節、そんなたまったものに目をつぶれないところが、
日本人だなあと、思う。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「都心の8坪 国産杉・板倉の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/47
豊かな豊かな、木のお家だった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
里山保全、環境保全のため、地域の活性化のために、地元の木を使って家を建てる
ということへの取り組みが、いろんな形であるようだ。
自然や地域の営みにのっかるような家づくりと暮らし。
それを選択するのは、とても素敵なことだ。
 
大学生の時、そんな取り組みに携わる人が近くにみえたので
私も将来家を建てることがあれば、、、そんなふうに思っていた。
しかし大学を出て、そんな取り組みに携わる人々との交流の場を離れているうちに、
そんな思いからもすっかり遠のいてしまっていた。
だからこのお家の紹介をみて、
遠のいてしまっていたものを再び引っ張り出されたような感じがした。
 
里山建築。
それは、”里山の循環の中にある『家』をめぐる営みそのもの”
と里山建築研究所は説明している。
そんな里山建築のひとつの形としての、板倉構法の家。
構造だけでなく、床も、壁も、天井も、杉の無垢材が使われている。
すっかり木に包まれて生活するのだから、吸い込む空気も柔らかに違いない。
きっと、人として、優しく誠実に生きられるに違いない、と、
大袈裟かもしれないけれど、そんなことを感じさせる建ものだった。
こんなお家を選ばれたこのご夫婦は、とても健やかで素敵な方たちだった。
  
            ◇ ◇ ◇
 
このお家、お風呂場には槙の浴槽が据えられていて、壁は杉。
台所の作業台にだって漆仕上げの木が使われている。
デリケートな木のお風呂と台所。
意外と楽なんです、と、お住まいの方はおっしゃるけれど、
どれだけ心を砕いた生活をしていらっしゃることか。
ユニットバスですら、ステンレス製の台所の作業台ですら私は苦戦しているから、
とてもとてもできないことのように思えてしまう。
でも、ちょっと、チャレンジもしてみたい。
 
木に触れたお湯が柔らかなお風呂に入れば、体も心もすっかりほぐれるだろう。
漆仕上げの台所でお料理すれば、食器やお道具のあたりが優しくて、
優しい気持ちで毎日のごはんを作れるだろう。
お風呂さん、ありがとう。
お台所さん、ありがとう。
そういう気持ちをいっぱい持って、デリケートなお家に向き合ってみる生活へのチャレンジ。
 
毎日の生活は、手入れ、手入れの繰り返しだ。
自分自身も、洋服も、食器も、台所道具も、そしてお家も。
限られた時間の中で、汚れがたまらないように、壊さないように、よい味が出るように、
毎日毎日、手入れを繰り返す。
それは気が遠くなることだけれど、一緒に時間を過ごしているという、
とっておきの楽しみでもあるはずだと思った。
 
そんな気持ちで、私も年末の手入れを頑張る。