渡辺篤史の建もの探訪ー思い出を紡ぐリノベーション(丸山弾、丸山弾建築設計事務所)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

急激に寒くなったから、今年は紅葉がとっても美しいのだときいた。
本当に。街路樹にだって、つやつや真っ赤の葉が混じる。
満開のお花とはまた違う、豊かな色がとても素敵だ。
落ち葉ふみも、どんぐり拾いも、楽しい季節になりました。
 
            ◇ ◇ ◇
 
さて、今回の建ものは「思い出を紡ぐリノベーション」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/34
築40余年の木造住宅が、長男夫婦が移り住むのを機に再出発したのだという。
しっかり根を張った大樹みたい。
新しくなった今も、年月を重ねてきた落ち着きはちゃんとそこにあった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
手まめに、手まめに、とにかく手まめに。
長い年月、そうやって人に住まれてきた建ものは、本当に魅力的だった。
毎日丁寧に手入れを繰り返して住まわれてきた室内。
愛情をたっぷり注いで育てられた植物であふれかえる庭。
私はこういうお家が本当に好きでたまらない。
実のところ今回は、どんな建ものだったかその印象はちょっと薄かったのだけれども、
このお家の空気はとにかく心地よくてうっとりだ。
 
今は伯母が一人で暮らす父の実家も、こんな空気をまとった家だ。
置いてあるものが上等だったり特別スタイリッシュだったりするわけではないけれど、
部屋の中にあるものはみんな丁寧に埃が毎日払われ、大切に使われている。
小さなお庭の植物はみんな、生えたいところに生えたいように芽を出し、
健やかに花を咲かせている。
「あら、あら、こんなところに芽を出して。」
丁寧にまわりの草や落ち葉を除きながら楽しげにする大好きな伯母の姿は、このお家のお母様に重なる。
 
家一つを維持するのは、本当に大変なことだと思う。
仕事に子育てにと奮闘しながらの毎日では、手が及ばないことも多いかもしれないけれど、
こんなふうに「庭付き一戸建て」との関係を築きながら年を重ねられたら幸せだなあと思う。
 
            ◇ ◇ ◇
  
この建築家丸山さんの作品は、すごく潔い感じがして、建築事務所のウェブページを見ながら思わず息をのんだ。
真っ白な壁と無垢の柔らかそうな床。
繊細に切られた窓。
素朴な山小屋のような空気も感じられる一方で、和独特の緊張感のある美しさもある。
シンプルに住んでもそのよさが生きるだろうけれど、どんどん自分色に染めていったって
受け入れてくれるような柔軟性、包容力もありそうだ。
今回の建もの探訪で紹介されたお家は、もう既に、このご家族の暮らしをたっぷり吸い込んで、
そして豊かなお庭の緑をまとっている。