渡辺篤史の建もの探訪ー里山を臨む 洋裁教室のある家(小野澤裕子・ 小野澤裕子建築設計事務所)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

今年は例年よりも早めで、もう、十五夜だという。
お団子を食べて「お月さま、こんばんは」というだけのことだのに、
なんだかまだ十五夜を迎える心の準備ができていなくて、気が急いてしまう。
扇風機の羽根は早々としまって、夏は潔く終わったはずだけれども。
  
            ◇ ◇ ◇
 
さて、今回の建ものは「里山を臨む 洋裁教室のある家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/25
とても朗らかなお家とご一家だった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
「建もの探訪」というより「お宅訪問」という感じだった。
お友達の渡辺篤史さんが新築のお家を見に遊びに来ました、
いらっしゃーい!!
という雰囲気の楽しい時間。
 
相馬家は男の子3人。
男の子3人の母、というのがぴったりな、さばさばとして気さくでおしゃれな奥様と、
おだやかでちょっと茶目っ気のあるサーファーのご主人がとっても印象的だった。
お家は、このご家族のように気取らず澄まさず伸びやかで、とても楽しげなのだ。
 
この「楽しげ」、このご家族が暮らす家だからなのだ、と思ってみていたのだけれど、
設計を担当された小野澤建築設計事務所のウェブページをのぞいてみたら、
そのホームページには
「その土地、その人ならではの楽しくウキウキするようなプランを考えます。」
とある。
その通りだね、小野澤さん。
建ものそのものが個性的すぎず、ちゃんとご家族に寄り添っている。 
そして、楽しくウキウキ、伝わってきましたよ。
設計事務所の仕事が、確かにそこにあるのだなと思った。
 
            ◇ ◇ ◇
 
このお家の肝は、なんといっても奥様が営まれる洋裁教室のスペース。
以前はリビングで教室を開いていたためにお教室開催ごとの片付けなどが大変で、
家族の居間スペースとお教室スペースを別にきちんととることからこのお家の計画は始まったそう。
そのお教室のあり方がまた、なかなかよいと思う。
 
建ものの外壁には、洋裁教室のロゴがちゃんと掲げられている。
玄関を入ればそこはもうお教室になっている。
ドアも仕切りもなく、玄関からそのまま広がるお教室スペース。
家族はお教室の様子を横目にみながら居間へと続く螺旋階段をのぼる。
「自宅教室」というと、お宅におじゃまします、という感じが強いけれど、
食堂やパン屋さんを営んでいるのと同じくらいの感じで、このお家は「洋裁教室」なのだ。
 
相馬家は、お家に洋裁教室スペースを設けた、というより、
洋裁教室を建てて生活スペースも確保した、と言ってもよいのかもしれない。
もちろん実際は、どちらを重視したということはないのだと思うけれど、
「洋裁教室」を家の、相馬家の大切なものとして位置づけている様子がとってもいいなと思った。
こういう形で、家族以外の人を受け入れるお家は、「楽しくウキウキ」する。
 
このお家、細かな工夫や面白さもいろいろあるけれど、タイトルにあるように、
「洋裁教室」なのがなにより、よい。