渡辺篤史の建もの探訪ー室内”シンボルツリー”の家(岡本浩・OASis一級建築士事務所)

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感想: 

台風後もぐずぐずとお天気の悪かったお盆休み。
夏らしい山に行きたいなあ、と夏の旅を思い起こす日。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「室内”シンボルツリー”の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/22
大地に暮らす、そんな楽しみを味わえる家だった。
 
            ◇ ◇ ◇
 
タイトル通り、このお家の核はオブジェの室内シンボルツリー。
37畳の広々としたLDK。
最高6mの高さになる天井からは光が差し込む。
そんな光が照らす真っ白な大きな壁には、木をモチーフにしたオブジェが据えられていた。
 
残念ながら、テレビの画面はそのオブジェと空間の壮麗さを味わうには十分ではなかった。
だから最初はたいして感銘も受けずに見ていたのだけれど、渡辺さんは思いのほか大きな感嘆の声をあげるものだから、
「あら、そんなにいいんだ。」
と、姿勢を正して画面を見直し、じっくりその場にいる自分を想像してみた。
 
これだけの大きな壁面。
「取り替えられないオブジェより、 季節や気分に合わせて絵画や大きなタペストリーを飾ったらおもしろいのに。」
そんなふうに最初は思った。
でも、想像を膨らますうち、 このオブジェはどんどん大きくなる。
庭の大きな生きた木を、「飽きたから植え替えよう」とひっこぬかないのと同じ。
生きたオブジェなのだなあと思う。
 
ゆうたりと横に広げた枝は大きな空間を抱きかかえるよう。
ちょっとおじぎをしているように傾けた梢は愛嬌たっぷりで、嬉しそうに揺れているよう。
家族はそれぞれに、木に預けるように、お気に入りの本をその枝に飾る。
 
アートを手に入れて飾ることはとても素敵なこと。
毎日眺めると、自分の気持ちに合わせて応えてくれる。
そんなことが書かれた記事を、以前雑誌で読んだ。
私の想像の中で、そんな言葉とこのお家のシンボルツリーが結びついた。
 
静かで落ち着いた1階には、家族それぞれの寝室を。
光のたっぷり入る2階には、家族が集える空間を。
そんな間取りになっている。
居間の木の根元で休む安心感。
そこまでいったら、シンボルツリーを褒め過ぎだろうか。
 
                    ◇ ◇ ◇
 
「雨は好きではなかったけれど、雨水が落ちるのをみるのも、音を聞くのも好きになりました。」
と、ご主人はおっしゃっていた。
なだらかな曲面にデザインされた庇は、雨音を心地よく響かせ、集めた雨水を滝のように流してみせるそうだ。
大きな里芋の葉っぱにたまった雨水が、時折じゃ、じゃ、と流れるような感じだろうか。
壊れた樋から滝のように流れる耳にも目にも鬱陶しい雨水の様も、ちょっと頭のすみっこをかすめた。
雨も情緒にする工夫。
 
                    ◇ ◇ ◇
 
広い一部屋のLDKは、「起伏に富んだおらかな大地をイメージしました。」とあるように、
広い中に自分の居心地のよい場所を、時々に合わせて見つけられる。
 
襖で区切られる和室。
一段高くなった掘りごたつのあるライブラリー。
ソファのあるエリア。
キッチンとダイニング。
そして、階下の地上からもみじが伸びるテラス。
 
這いつくばってみたり、転がってみたり、腰掛けてみたり。
今娘と一緒にコロコロズリズリ過ごしている私は、そんな「大地をイメージ」をとてもリアルに想像の中で楽しめる。