渡辺篤史の建もの探訪ー屋内縁側とスタジオのある家(廣部剛司・廣部剛司建築研究所)

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感想: 

朝7時。我が家の居間は強い朝の日差しに照らされて、うだるような暑さ。
とてもカーテンは開けられず、この時間はぐっと我慢で朝の仕事。
 
日が高くなるにつれて強い日差しは少しずつ退散し、南と北とにあるベランダから気持ちのよい風がすうっと抜けるようになる。
窓は全開。夏らしい暑さと涼しさが本当に嬉しい。
 
お昼を過ぎると空気はすっかりあつくなって、むっとした重たい暑さに体がかゆくなる。
ピ。
ちょっとエアコンに登場いただく。
 
夕方、強い西日が攻撃してくる。
日差しを逃れてお部屋を移動したり、炎天下が過ぎたお外に散歩に出たりする。
 
夜、空気が冷めたら、また気持ちのよい風が部屋に入り込む。
静かに扇風機が回るお部屋もまた、なかなかよいものだ。
 
私は夏が、好きだ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「屋内縁側とスタジオのある家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2014/21
光と風が通る屋内縁側。光と風が入れないスタジオ。
 
            ◇ ◇ ◇
 
「ずばり、この家を言い表すと?」
「光と風が通る家。」
ご主人はすまして答える。正に。
でもこの家のイキイキの大切な要素のひとつは、光も風も遮断された地下のスタジオ。
そのことがなんとも滑稽で楽しくて、思わず笑みがこぼれてしまう。
 
「うぁー!!!奥さんにどうやって言い訳するんですかあ!!!」
本格的なスタジオとそこに据えられたドラムセットを前に、渡辺さんは叫ぶのだけれども、趣味をこんなふうに楽しむことができるのだから、私が「奥さん」だったら、言い訳なんてしてもらわなくったって、じゅうぶんに嬉しくて賛成だ。
 
スタジオでセッションを楽しむのは、ご主人とご主人の大学時代からのバンド仲間である建築家というからなお楽しい。
建築家とご主人の企み。
自分達の楽しみの場所を自分達で作れる喜びといったら、格別だろう。
これもまた、本当に素敵な一期一会の家づくりだと思う。
 
                    ◇ ◇ ◇

光と風が通らない家の核も十分に素敵だけれど、やっぱりこの家は「光と風が通る家」と言い表すのにぴったりだった。
家の真ん中を「縁側」が貫く。
光と風は縁側を力強く抜けて、枝葉が分かれるように家中を巡るようにみえた。
「田舎家」の建築家による現代の解釈という。
たぶん私はまだ半分くらいしか理解していないように思えるけれど、心地よい考え方だと思う。
 
家のつくりようは、夏をもって旨とすべし
兼好法師の残した言葉は、いろいろ意見はあれど、夏の日にお家を考えるとしっくりとくる。
 
私は私なりに夏の光と風を感じて過ごしながら、この家の気持ちよさを想像している。
もっとも、一日風を取り入れて過ごす日々は、砂埃の掃除に手をやくのだけれども。