渡辺篤史の建もの探訪ー木箱12個を積み上げた家(佐藤森、+0一級建築士事務所)

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感想: 

娘の帽子を編み始めた。
最近、ろくに本も読めていないなあという日常でも、
編物はそれなり進むから不思議だ。
本が読めていないのは、気合いの問題みたいだ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「木箱12個を積み上げた家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/39 
ちょっと変わった構造だった。
 
             ◇ ◇ ◇
 
12個の木箱とその隙間で空間が作られている。
全体は3層。
各層4個づつの木箱が、かざくるまの羽根のようなイメージで並べられている。
2層目の羽根は1層目とは逆転させた状態になっているので、
2層目の箱は、1層目の箱同士に架けるような格好だ。
2層目と3総目もしかり。
 
かざぐるまの中心は吹き抜けになっている。
家の中だというのに木が植えられていて、床はモルタル仕上げ。
中庭と言えるような外の雰囲気がある。
ちょっと不思議な広がりがある。
 
1階の4つの箱は、それぞれ玄関、台所、居間、水廻りになっている。
そして箱の隙間がダイニング。
2階の4つの箱は、家族それぞれの個室と主寝室。
その各個室にはロフトがあって、それが3層目の箱。
 
各箱は、吹き抜け側にも外側にも窓があって、
内にも外にも開いた感じがする。
なんといったらよいのか、、、。
これは実際に身を置かないといい言葉を見つけきれないけれど、
テントがたき火を囲むようなに、
森の中にツリーハウスを円状に作った、
というようなイメージが、私の頭の中にぱっと浮かんだ。
それぞれの個室は独立しているけれど、中心を向いている。
家の中心に植えられた木や、ぐーんと積上った木の箱の様子から、
森の中にいるような、そんな感覚を持った。
 
              ◇ ◇ ◇
  
ツリーハウスのよう、そんなワクワクした楽しい印象とは別に、
ちょっと、もやもやした気持ちも沸いた。
面白い構造になっているからこそ、使いにくさもありそうで、
どこか建ものに暮らしを合わせなくてはならない、そんな印象もあった。
 
たとえば、個室には、ホントはこんなにロフトはいらないだろうなと思った。
物置きスペースになってしまいそうだ。
物置きとするには、ロフトは出し入れがしにくいと思う。
今はまだ、ご夫婦と1歳に満たないお子さん一人のお家とあって、
まだ物や空間を眠らせてある、そんなふうに感じられる場所が結構あった。
 
冷暖房はどうだろうか。
各部屋にはエアコンが取り付けられていたから、
家全体での冷暖房のシステムという形ではなさそうだった。
何しろ、家の中央は約6.5mの高さの吹き抜けという。
寒がりの私は、1階の台所やダイニングが冬に冷え冷えとするのではないかと
心配で仕方がない。
寒い日に、家族それぞれがそれぞれの部屋に冬籠り、
となってしまっては、なんとなく寂しい。
広いお家の中、約6畳の箱居間にみんなでお篭り、
というのもなんとなくもったいない。
建てるならあったかい家を!と思う私は、
実際のところ、こういうお家はどうなのだろうかと、
なにしろ気になるの。
 
             ◇ ◇ ◇
 
あっと驚くダイナミックさ、
どうなっているの?とワクワクする空間の連なり、
それらが「日常」になる。
素晴らしいことだと思う。
そんな暮らしがどんなか、10年、20年住まわれた後、
このご家族の言葉を聞いてみたいと思う。
住みこなされて成長した家をも見てみたいと思う。