渡辺篤史の建もの探訪ー色々なところで繋がる家(糸井裕構+杉山純一+篠原智一、 株式会社sside一級建築士事務所)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

どんどん秋が深まる今日このごろ。
お隣さんのたわわに実る柿の木が見事だ。
柿狩り、お手伝い致しましょうか?
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「色々なところで繋がる家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/38
   
工学的な印象があるお家だった。
使いやすさ、心地よさというものを、丁寧に論理的に積み上げていった
という感じがした。
そういうすっきりとした心地よさがあって、
そして、大きな考え方から細部の工夫まで、
たくさんの「使いやすそう」が詰まっていた。
  
              ◇ ◇ ◇
 
「色々なところで繋がる家」というタイトル通り、建ものの中は繋がっている。
 
1階は、洗面室とウォークインクローゼットは確かに閉じているけれど、
和室と寝室は引き戸を開いて一体ともなるし、
和室は障子を開ければ玄関と一体となる。
 
2階はリビング、ダイニング、キッチンが一部屋になっていて、
2階と3階はダイナミックな吹き抜けで繋がっている。
3階は、吹き抜けに架けられた橋のような勉強スペースと、
そこから1段上がって籠れる子供達の寝室用のスペース。
ここのスペースも2階との関係はロフトのようで、
ドアは設けられていないし、仕切りの壁も天井まで届いていない。
 
そして1階、2階、3階を螺旋階段が結びつける。
階段室にドアはない。繋がっている。
 
そういうお家の冷暖房はいかに?というのが気になるところ。
この建ものでは、玄関脇の螺旋階段の下に置かれた1台のヒーターが(冷房もか?)
家全体を温めるのだそうだ。
どれくらい効率よく温まるのか、夏の暑さをしのげるのか、
実際のところを知りたいけれど、温かいも涼しいも、
家全体がひとつになる心地よさは格別なものがあるだろう。
私にとっても、こういう温め方ができるお家がやっぱり理想だ。
 
家族が繋がる、空気が繋がる、空間が繋がる。
気も風も通ることは、とっても大切なことだと思う。
 
              ◇ ◇ ◇
 
このお家の使いやすさとして、ご主人が特に得意げに話してみえたのは
浴室、和室 寝室をつなぐ動線だ。
この浴室、和室、寝室は1階にあって、
隣り合った和室と寝室の間の引き戸を開けば、一体となる。
和室は浴室の真ん前。
まだ小さい子供たちをお風呂に入れた後、
和室でゆったりパジャマを着せて、そしてそのままおやすみなさい。
奥様のアイディアとのこと。
そうそう、そうやって和室を使えたら便利よね、と大きくうなずく。
 
中庭デッキに面した洗面室も、とても使い勝手がよさそうだった。
まず、汚れて帰ってきた子供達が浴室に直行できる玄関からすぐの位置にある。
浴室と洗濯スペースも一続き。
洗濯機はきちんと収納兼作業台の一部として収められている。
この洗濯機付近に作業台がある、というのが素晴らしい。
洗濯前に仕分けしたり、干す前にしわを伸ばしたり、
何かと台が必要になる。
私はいつも、洗濯機が近いキッチン台でするのだけれど、
これがあるからぴっちり素早く干せると思う。
アイロンがけもここでするのもいいかもしれない。
基本的には、この作業台の上に取り付けられたポールに
室内干しをするのだそうだが、中庭に面する掃き出し窓を開けておけば
外干しに近いほどに風は十分に通りそうだ。
ポールの位置も、動線の邪魔にならないように丁寧に考えられていた。
この「洗面室」と紹介されているスペース、私にとっては「洗濯室」といいたい。
開放的で機能的な「洗濯室」があるというのは、すごく嬉しい。
 
そして最後は子供部屋。
このあり方もなかなか面白く、素敵だと思った。
LDKの吹き抜けと繋がる3階部分は子供達のためのスペース。
LDKに繋がった空間とあって、階下での会話やらテレビの音やら、
結構気が散る勉強スペースではないかと思ったりもするのだけど、
お互いに気遣いながら、気配を感じながら過ごすことは、
それはそれで健全で温かい。
勉強スペースと寝室スペースとに分けられているのがまたいい。
勉強スペースの一続きの机に兄弟二人が並んで勉強して、
寝室スペースの左右に別れて作られたそれぞれのスペースで、
兄弟それぞれを感じながらも自分の時間を持って、眠る。
受験や試験でどちらかが遅くまで勉強する、そんなことで、
私と姉の部屋も分けられた。
おねいちゃん、教えて、としょっちゅう姉の部屋へ行っていたっけ。
姉妹並んで寝るのは、話も尽きず、楽しかった。
そんなことを思い出しながら、
この子供部屋は、兄弟がとってもいい関係を保ちながら、
仲良く成長していける部屋だなと思った。