渡辺篤史の建もの探訪ー余裕を生む”ずらした”切妻(古谷誠章+NASCA、 NASCA)

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建もの探訪ファン
感想: 

シルバーウィークには、栃木県の益子で開かれている土祭に行ってきた。
今回の旅は、カメラなしに感性開いて味わおうということで、
隣町のお宿の前でだけ、パチリ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「余裕を生む”ずらした”切妻」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/34
細長ーい建物。
 
             ◇ ◇ ◇
 
T字路の突き当たりにある細長い敷地に、きっちりはめ込むようにこの建物は建つ。
その形は、南北4m×東西13mの切妻を長手方向に半分にして、
ちょっとずらした細長い箱のよう。
この「ずれ」がミソ、の建物だ。
 
まず、「ずれ」部の外空間は、道路に面する西側は駐車スペース、
敷地の奥になる東側はバスコートであり、物干しスペースになる。
そして、ずらして生まれた西側の端のL字の壁には、
大きなはめ殺しの窓とベランダ付きの掃き出し窓が配されいる。
L字型になっていることで、すぐ横に迫る隣の建物とも接する道路とも
うまく距離を保つことができていて、生きた開口になっている。
特に、家の前のT字の道路の先には公園のこんもり豊かな緑が見える。
この緑はこの敷地の何よりの財産で、それがとても大切にされていた。
東側もバスコートがあることで、2階のリビングにも、1階のお風呂と洗面所にも、
気持ちよく光と風を入れることができてきる。
気持ちよくて、お風呂に朝入るようになりました、
とご主人は嬉しそうにおっしゃっていた。
 
間口の狭さは難ではあるけれど、
「ずれ」その工夫で、なるほど土地が生きていた。
 
              ◇ ◇ ◇
 
狭くはないけれど細長い。
2階は、建物の形そのままの1ルームLDKになっていた。
南側の壁には業務用の設備を組み合わせたキッチンが、
北側の壁には作り付けの棚がだーっと据えられている。
キッチンも棚も、どちらも見せる収納だ。
 
特にキッチンは、コックさんでもある奥様が厳選した道具たちが、
いつでも手にとれるように、手に取りやすいように並べてあって、
業務用の設備と相まって、その存在たるやいかにも堂々としたものだ。
厨房の中にリビングがある、そういう雰囲気だなあと思う。
でも子育てしていて思うのは、いかにきちんと食べさせるか。
いかにきちんと食べられる人にするか。
台所で遊び、学んだら、間違いはないと思っている。
だから、3人の子供達を育てる場として、
このシンプルな細長い箱をこのお夫婦が作り込んだらこういう形になった、
というのがなかなか面白く、そして共感した。
 
ただちょっと、このスタイルは目にうるさいな、というのが正直なところ。
だーっと作り付けの棚が続いているがゆえに、何か置かなきゃいけない、
そんな感じで、なんとなく収納と飾りが混在して並んでいるという印象があった。
以前番組で紹介された町田市にあるお宅で、作り付けの収納は最小限にした、
という考え方にとても感銘をうけたのけれど、
このお宅も、必要な分だけの書棚を据えたり、自由に模様替えできるように
移動可能なシンプルなパソコン台を造作してもらった方がすっきりするし、
この細長い箱の使い方を、家族の成長とともに工夫できるのではないだろうか。
 
              ◇ ◇ ◇
 
印象的だったのは、もうひとつある。
細長さをカバーするのにも一役買っている、素敵な素材が2つあった。
 
ひとつは、1階部分の引き戸に貼られていたワーロンという強化障子紙。
1階部分は、トイレも含め、2つの寝室の扉もすべて引き戸になっていて、
その引き戸には、このワーロンが使われていた。
木の扉のような重さがなく、ゆるやかに光が繋がっているような優しさがあって、
通路の狭い1階にはとってもよく合った素材だと思った。
 
そしてもうひとつは、浴室の壁に貼られた小さなタイル。
その色が、白だけれどどこかガラスのような透明感があって、
とっても素敵だった。
このお風呂は、バスコートと掃き出し窓で繋がっている。
お風呂から直接外に出られるというのは、なんだかちょっと普通と違っていて楽しい。
明るく透明感のあるタイルによって、バスコートも浴室も栄える魅力的な空間になっていた。
広さを演出するように効果的に据えられた鏡と合わせて、
素敵な色のタイルを選ばれたな、と惚れ惚れと見た。