渡辺篤史の建もの探訪ー大きな庭の小さな家(小泉誠、Koizumi Studio)

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感想: 

初めての千葉の海は、想像以上に美しくて楽しかった。
山派?海派?と聞かれれば、山派!と即答していた私だけれど、
いやいや、これからは海派になりたいとすら。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「大きな庭の小さな家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/29
大きな庭と小さな家。
そのふたつがとてもよいバランスで、心地よい関係にある。
ふたつが合わさるそのあり様がとても美しいなと思った。
 
             ◇ ◇ ◇
 
大きな庭。
194㎡(59坪)と、もともとしっかりした面積がある敷地。
そこに建築面積40㎡(12坪)と、小ぶりな建もの。
そんな大きな庭。
でもそれは、大きな庭と小さな家、というバラバラなものではなくて、
屋根のない部屋と屋根のある部屋とでもいおうか。
庭と建ものはぴったりと一体になっているように感じた。
 
建ものによって道路とは隔離され、
隣家との間には背の高い簾のようなものが据えられている。
庭は、建物の南に開いた守られた空間になっている。
 
芝生が広がる庭には、大小の築山が2つ。
ひとつの風景のような、広い部屋に置かれた大きなソファのような。
登ったり、転がったり、寝転んだり、座ったり、、、。
芝生の山、それだけで、心がたくさん動く遊び場だ。
 
ふたつの築山の間には、小さな建ものから伸びて出たデッキがある。
そのデッキの真ん中の一部は、四角く切り取られている。
それは植栽のためでもあるけれど、ベンチ兼テーブルとして作られた台を据えれば
掘りごたつのようにも使える。
そう、掘りごたつ!
こういうところが、庭を屋根のない部屋のように感じる要素なのかもしれない。
 
そしてデッキは、建ものの中へと接続する。
デッキは建ものの屋根の下へもぐり、その屋根のあるスペースから、
居間へと続いている。
 
居間と庭が直接に掃き出し窓で繋がっていて、
庭が居間の延長のように作られている建ものは、今までたくさん見たことがある。
でも、この建ものはちょっと違う。
居間には、庭を絵のように切り取る大きな窓がひとつ。
居間の掃き出し窓は、建ものにもぐり込んだ屋根のあるデッキ部分に出る。
その内のような外のような曖昧な空間に出るとはじめて、
広い庭へと繋がるのだ。
その屋根のあるデッキ部分は、部屋の延長のような縁側とはまたひと味違って、
内のような外のような曖昧な「部屋」のようなのだ。
そこから繋がる庭も、居間とはまた別の部屋のよう。
 
遠からず、近からず、庭と居間とのいい関係だなと
思うのだ。
 
           ◇ ◇ ◇
 
小さな家。
敷地が狭いわけではないなかで、建ものが12坪とはちょっとびっくりしたけれど、
すごく誠実で、日本らしい生活の美しさがあるような建ものだと思った。 
”家族の関係、家族の居場所を素直にまとめた質素な家です。”
という建築家の言葉は、本当にぴったりとして素晴らしいと思った。
 
部屋は4つ。
1階には居間・台所。
2階には居間の吹き抜けに面した畳の多目的室と、布団使用の板の間の寝室。
そして屋根裏のような子ども室。
これ以上、他に何がいるのだっけ?とつい思ってしまう。
その広さでうまく成り立っているのはやはり、日本の暮らし方を基本にしているからだろう。
ソファーを置かないくつろぎ畳の多目的室。
布団を上げ下げする寝室。
柔軟に位置をずらせる食卓と食卓上のライト。
また、建もの本体とは別に物置もまた別に計画されていることも、
家自体が窮屈にならない大切なことのひとつだろう。
簡潔で、明解で、そして柔軟性があるから、
上手に暮らしていけそうな気がした。
 
細やかにデザインされた家、家具、そして庭。
小さな家だけれど、最後にやっぱり思うのは、
小さな建ものなだけで、庭という部屋がある大きな家だなあ、ということ。
美しかった。