渡辺篤史の建もの探訪ー内と外がシームレス 分棟型の家(西田司(ニシダオサム)+海野太一(ウミノタイチ)+一色ヒロタカ(イッシキヒロタカ)、オンデザインパートナーズ)

ユーザー 建もの探訪ファン の写真
建もの探訪ファン
感想: 

あちこちで夏祭り。
ベビーも特別夕外出。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「内と外がシームレス 分棟型の家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2015/27
大きなソファーで、ベッドで、小さな畳スペースで、どの部屋でもいつでもゴロリ。
緑に囲まれ広い空を仰ぐ。
こんなお家に住んだら、1年中夏休みだ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
道路から見えるのは、のっぺらぼうの箱が2つ。
窓のない建ものの「顔」は、少々気持ちが悪いようだけれど、
さてさて、のっぺらぼうの箱の向こう側に足を踏み入れると、別世界が広がった。
建ものとその脇の砂利のお庭が、ぐーっと奥へと続いている。
お庭は確かに「外」だし、隣地との境に塀もない。
それなのに、囲まれた庭の雰囲気は、建ものの中なような雰囲気すらある。
 
建ものに入ると、すぐに広いLDKが広がる。
左右両面全面が大きなガラスの掃き出し窓になっていて、
庭との境に高低差はなく、部屋はそのまま庭へと続いている。
隣が住宅になっている側には、一枚の壁が立てられていて、
建ものの箱と壁との間はデッキに。
隣が緑が生い茂る側には、塀も設けず借景を楽しめる砂利の庭が作ってある。
天窓からもLDKに光が差し込む。空だけ、の絵。
そんな自然の光と影、そして風が楽しめるLDKは、
まるでお庭に大きなパラソルを広げたようだった。
内はどんどん外へ広がり、外がどんどん入り込む。
内と外が、柔らかに一体となった、とても気持ちがいい空間になっていた。
 
             ◇ ◇ ◇
 
この建ものが面白いのは、”敷地いっぱいに箱型の建物を散りばめたプラン”
と紹介されている通り、分棟型の家であるということ。
LDKの箱を中心に、寝室、書斎、アトリエ、客間の4つの部屋を、
それぞれ独立して1階と2階に分けて配置して、
屋根をかけたりテラスでつなげたりして一つの建ものになっている。
客室、アトリエとして使っている2部屋は、LDKとは内で繋がっていない、
しかし一つの建物としてくっついた「離れ家」になっている。
 
”家のなかで、好きな人に出会い、会話をしながら、一緒に食事をとり、
また自分の場所へと別れて行くような”
と番組Webページにはこの建ものの紹介がある。
確かに、シェアハウスのようなそんな考え方をこの建ものに当てることもできるけれど、
建主であるご夫婦の部屋の使い方、そして自分が感じている家族との時間を思うと、
やはり暮らしの「核」、「自分の居場所」は家族みんなの空間であるLDK、
友人達と集うLDKだと思う。
そして時に、一人旅に出るように、そっと自分だけの空間へ旅する。
少し晴れやかな気分で、新鮮な気持ちを持って、LDKに帰ってくる。
そっちの方が、なんとなくしっくりと私の心に入ってくる。
離れ家は、LDKとの距離感がとても心地よい。
くっついている。でも確実に切り離してある。
限られた敷地の中で、メリハリのある豊かな時間の流れがあるように感じた。
  
             ◇ ◇ ◇
 
この分棟型の建ものは、建物と庭(外)との繋がりや配置がとても巧みで面白い。
小さなテラススペース、外通路、縁側のようなデッキ、
建ものを見渡し、空を眺める外階段とその踊り場、、、。
建物の箱だけでなく、様々な雰囲気をもつ「小さな外」も、
たくさん散りばめられている。
こんなこと、道路から見るのっぺらぼうからは到底想像つかない。
それもまたロマン。