「昼間はカーテンを閉めずに暮らしたい。」
「できれば、昼間はカーテンを閉めずに暮らしたいんです。」
窓のお話をしていると、
こんなご希望をいただくことがあります。
せっかく大きな窓をつくっても、
外からの視線が気になって、
ずっとレースカーテンを閉めている。
今の住まいが、
まさにそんな状態だという方もいます。
新しい家では、
できればカーテンを開けて、
外の光や庭を感じながら暮らしたい。
そんなとき私は、
「では、外から見えない窓にしましょう。」
とは、すぐには考えません。
まず、
「今のお住まいでは、どこからの視線が気になりますか?」
と、お聞きしてみます。
道路から見える。
向かいの家から見える。
隣家の窓と、
こちらの窓が向かい合っている。
駐車場を通る人と、
目が合いそうになる。
同じ「外からの視線」でも、
その方向はそれぞれ違います。
そして実際には、
外のすべての場所から、
家の中が見えるわけではありません。
気になるのは、
ある特定の方向だったりします。
それなら、
家全体を閉じなくてもいいのかもしれません。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
「リビングは大きな窓にしたいんですけど、カーテンを閉めっぱなしになるのは嫌なんです。」
とおっしゃっていました。
そこで、
敷地の周りを一緒に見ながら、
「どこから見られるのが気になりそうですか?」
とお聞きしました。
一番気になっていたのは、
敷地の前を通る道路でした。
でも、
ご夫婦がリビングから見たいのは、
道路ではありません。
庭の木と、
その向こうに見える空でした。
それなら、
道路とリビングの間に、
視線を少し止めるものをつくる。
壁でもいい。
植栽でもいい。
建物の配置そのものを工夫する方法もあります。
すると、
道路から室内への視線は届きにくくしながら、
室内から庭や空へは、
視線を伸ばせることがあります。
そこで考えていたのは、
窓を隠すことではなく、
見られたくない方向と、見たい方向を分けることでした。
窓を考えるとき、
つい、
「大きいか、小さいか」
で考えてしまいます。
でも、
同じ大きさの窓でも、
どこにつけるかによって、
暮らし方はかなり変わります。
道路の正面にある窓。
庭の奥へ向いた窓。
隣家の窓と少し位置をずらした窓。
空だけが見える高い位置の窓。
それぞれ、
外との関係は違います。
だから私は、
窓そのものを見るよりも、
窓の先に、視線がどこまで伸びていくのか。
そこを考えることがあります。
例えば、
ソファに座ってみる。
そこから外を見る。
何が見えるだろう。
反対に、
道路に立って、
リビングの方を見る。
どこまで見えるだろう。
ダイニングに座ったとき。
キッチンに立ったとき。
庭へ出たとき。
見る場所が変われば、
視線の高さも方向も変わります。
図面の上では同じ一本の線でも、
実際には人の目線は、
家の中と外を行ったり来たりしています。
その通り道を考えていくと、
窓の位置が少し変わることがあります。
もちろん、
周囲の環境によっては、
カーテンやブラインドが必要になることもあります。
住宅が密集している場所。
人通りの多い道路沿い。
隣家との距離が近い敷地。
完全に視線をなくすことが難しい場合もあります。
それでも、
最初から「カーテンを閉めればいい」と考えるのではなく、
建物や庭でできることを考えてみる。
すると、
昼間はカーテンを開けて過ごせる時間が増えることもあります。
ですから、
「できれば、昼間はカーテンを閉めずに暮らしたいんです。」
と聞いたとき、
私は、
「カーテンを開けた先に、何が見えていてほしいですか?」
と、お聞きしてみたいと思っています。
庭の木なのか。
空なのか。
光なのか。
子どもが遊んでいる姿なのか。
そして同時に、
どこからの視線は避けたいのか。
その二つが分かってくると、
窓の考え方も変わってきます。
窓は、
光を入れるためだけの穴ではありません。
家の中から外へ、
そして外から家の中へ、
視線が行き来する場所でもあります。
見たい景色には開いて、見られたくない方向には少し閉じる。
私は、窓の大きさを決める前に、家の中と外を行き来する視線を一緒にたどりながら、カーテンを開けたくなる家を考えていけたらと思っています。