「モデルハウスみたいに暮らせるでしょうか?」
「モデルハウスみたいに暮らせるでしょうか?」
家づくりのご相談で、こんなお話をいただくことがあります。
住宅展示場や完成見学会へ行くと、
きれいに整った空間が広がっています。
キッチンの上には物がほとんどなく、
リビングの家具もきれいに配置されている。
洗面台には歯ブラシもなく、
玄関にも靴が出ていない。
「こんな家だったら、毎日気持ちよく暮らせそうですね。」
そう思うこともありますよね。
そんなとき私は、
「収納をしっかりつくればできますよ。」
とは、すぐにはお答えしないことが多いんです。
まず、
「モデルハウスの、どんなところがいいと思われましたか?」
と、お聞きしてみます。
すっきりしているところ。
家具がきれいに揃っているところ。
物が見えないところ。
広々としているところ。
ホテルのような雰囲気。
いろいろな答えが返ってきます。
でも、もう少しお話を聞いてみると、
「物がないこと」そのものを求めているわけではないことがあります。
「家に帰ったとき、視界がごちゃごちゃしていないと落ち着くんです。」
「休日くらい、片づけのことを考えずに過ごしたくて。」
そんな言葉が出てくることもあります。
それなら、
目指したいのはモデルハウスそのものではなく、
そこで感じた心地よさを、自分たちの暮らしの中につくることなのかもしれません。
以前、ご相談いただいたご夫婦も、
見学したモデルハウスをとても気に入っていらっしゃいました。
「できれば、あんな感じで暮らしたいです。」
とおっしゃいました。
そこで、
「今の家で、モデルハウスと一番違うと感じるところは何ですか?」
とお聞きしてみました。
奥様は、
「やっぱり物が多いことですかね。」
と。
そこで、
普段リビングに出ているものを聞いてみました。
お子さんのランドセル。
ご主人の仕事用バッグ。
郵便物。
充電器。
ティッシュ。
読みかけの本。
脱いだ上着。
どれも、
暮らしていれば出てくるものばかりでした。
「これを毎回、全部見えないところへ片づけられそうですか?」
と伺うと、
お二人とも少し笑われました。
「たぶん無理ですね。」
そこで、
少し考え方を変えてみました。
モデルハウスは、
基本的には「見てもらうための家」です。
誰かが帰宅して、
バッグを置くわけではありません。
郵便物が届くわけでもありません。
子どもがランドセルを放り出すこともない。
夕食をつくったあとに、
調味料や食器が残ることもありません。
一方で、
実際の家には毎日、
いろいろなものが入ってきます。
だから、
モデルハウスと同じ状態を保とうとすると、
暮らす人の方が家に合わせ続けることになる場合があります。
それよりも、
バッグは帰宅した場所の近くへ。
郵便物は、とりあえず置ける場所へ。
子どものものは、自分で戻しやすいところへ。
毎日使うものは、
無理に遠くへ隠さない。
そんなふうに、
暮らしたあとに出てくるものまで含めて家を考える。
その方が、結果として整いやすいこともあります。
もちろん、
モデルハウスのような美しい空間を目指すことが、
悪いわけではありません。
好きな家具を置く。
素材を整える。
見せたくないものを収納する。
そうしたことも、
家づくりの楽しさだと思います。
ただ、
完成した瞬間だけ美しい家と、
暮らし始めてからも心地よい家は、
少し違うことがあります。
家には、
人が暮らした痕跡が少しずつ増えていくからです。
ですから、
「モデルハウスみたいに暮らせるでしょうか?」
と聞かれたとき、
私はまず、
モデルハウスの何を、普段の暮らしにも残したいのか。
そこを一緒に考えてみたいと思っています。
物が少なく見えることなのか。
帰宅したときの落ち着きなのか。
家具や素材の美しさなのか。
片づけに追われないことなのか。
そこが分かれば、
モデルハウスをそのまま再現しなくても、
その心地よさを取り入れる方法は見つかるかもしれません。
家は、
見てもらうための場所ではなく、
毎日を過ごす場所です。
きれいな状態を守り続ける家ではなく、暮らしても無理なく心地よさが残る家。
私は、そんな「暮らしたあとの姿」までお話ししながら、そのご家族に合った家を一緒に考えていけたらと思っています。