暮らしは、少しずつ馴染んでいく

ユーザー ナイトウタカシ建築設計事務所 ナイトウタカシ の写真

住み始めてからしばらくして、
こんなふうに話していただくことがあります。

 

「最初より、だいぶ馴染んできました」

 

引っ越したばかりの頃は、
どこか落ち着かない。

 

空間は整っているはずなのに、
まだ自分の場所になりきっていない感覚。

 

それが、
日々過ごしていく中で、

 

少しずつ変わっていきます。

 

どこに何を置くかが決まり、

 

動きが自然になり、

 

気づけば、
考えなくても体が動くようになる。

 

その変化の中で、

 

暮らしは
少しずつ空間に馴染んでいきます。

 

最初の頃は、
空間に合わせようとする意識が強く、

 

どこで何をするのかを
少し意識しながら過ごしていることが多い。

 

けれど、
時間が経つにつれて、

 

その意識は少しずつ薄れていきます。

 

自分たちのリズムができ、

 

空間との関係が
自然なものになっていく。

 

そのとき、
家は「新しい場所」から、

 

「いつもの場所」へと変わっていきます。

 

設計の段階では、

 

できるだけ無理のない形を整えていきますが、

 

本当の意味での心地よさは、

 

住みながら見つかっていく部分もあります。

 

ここが落ち着く。

 

この動きがしっくりくる。

 

そうした感覚が積み重なることで、

 

暮らしは
少しずつ整っていきます。

 

馴染んでいくというのは、

 

空間が変わるというより、

 

自分たちの使い方が
その場所に合っていくこと。

 

そして同時に、

 

空間もまた、
その暮らしを受け止めながら、

 

少しずつ意味を変えていきます。

 

最初からすべてがしっくりくる必要はありません。

 

時間をかけて、
ゆっくりと馴染んでいく。

 

その過程を含めて、

 

住まいというものが
成り立っているのだと
思っています。