「風景と暮らす家|和モダン住宅で実現する“つながるリビング設計”」

※リビングから望む中庭のある暮らしの風景。四季折々の彩りが暮らしに潤いを添える、和モダン住宅の設計実例です。
【はじめに】
窓の向こうに見える庭の風景。
軒下から差し込むやわらかな光。
リビングに吹き込む風が、
木々の香りを運ぶ——。
暮らしの中に「風景」があるということは、
単に眺めがよいというだけでなく、
住まい手の心の豊かさや
日々の充実感に深くつながっています。
やまぐち建築設計室では、
和モダン住宅におけるリビングを
「内と外の架け橋」として設計しています。
今回のnoteでは、
「風景とつながるリビング設計」と題し、
中庭・庭・外構との調和を軸に、
視線・光・風の通り道までを
建築家の視点から、
暮らしの中に自然を取り込む
空間づくりの工夫を書いてみたいと思います。
【第1章】 住宅におけるリビングの位置づけと役割
リビングは単に「くつろぐための場所」
ではありません。
住宅においては、
空間全体の重心であり、
住まい手の価値観や美意識が
最も表れる“象徴的な空間”といえます。
やまぐち建築設計室では
リビングを生活の場でありながらも、
“暮らしの風景が編まれていく舞台”と
捉えています。
そのため、
天井の高さ、開口部の位置、
隣接する空間との関係性、
床素材や家具のレイアウトに至るまで、
住まい手の動線と視線の流れを
意識した設計が不可欠です。
さらに重要なのは、「外とのつながり」。
玄関同様にリビングは屋外と
最も親密な接点であるため、
庭や外構と調和しながら、
“内でもあり、外でもある”ような
曖昧さを持たせることで、
空間に広がりと深みが生まれます。
【第2章】 中庭・坪庭を中心に据える空間構成
中庭や坪庭のある住まいは、
まるで建築の内側に
自然が入り込んできたような
感覚をもたらします。
和モダン住宅においては、
閉じながら開くという
“矛盾を抱える設計”が
空間の魅力を際立たせます。
たとえば、隣地からの視線を遮りつつ、
採光と通風を確保するための中庭。
この中庭をリビングに対して
中心軸として配置することで、
日々の暮らしに「余白」が生まれます。
朝の光が差し込む窓際で本を読む。
子どもが走り回る庭を眺めながら
コーヒーを飲む。
ふとした瞬間に目線の先に緑がある—— 。
それだけで暮らしは深く、
豊かになるのです。
やまぐち建築設計室では、
中庭を単なる装飾ではなく
「暮らしを包み込む環境装置」として捉え、
視線、風、音、光のすべてを
丁寧に設計に取り入れています。
【第3章】 大開口の窓と
軒の工夫がもたらす“内外の曖昧さ”
大きな開口部は、
内と外の境界をなめらかに溶かします。
しかし、
ただ開放すれば良い
というわけではありません。
「開く」と「守る」のバランスを
考慮した窓設計と軒の出寸法が重要です。
たとえば、
リビングの南側に
大きな掃き出し窓を設ける場合、
そのままでは
夏の強い日差しが入りすぎたり、
冬の放熱ロスが大きくなったりすることも。
そこで軒の出を調整し、
夏の高い陽射しは遮りながらも、
冬の低い太陽はしっかりと
室内に取り込むように設計します。
また、サッシの選定や
床とテラスの段差をなくすことで、
視覚的にも物理的にも
“つながり”を生み出します。
このような設計により、
外にいながら内にいるような安心感、
内にいながら自然と
触れ合うような開放感が、
リビングという空間に宿るのです。
【第4章】 庭・外構・アプローチとリビングとの調和
庭と外構、
そしてアプローチは、
単なる外部空間ではなく、
リビングという
“日常の中心”へと至る風景のプロローグです。
アプローチから玄関、
そしてリビングへと続く動線は、
住まい手の「心の準備」を
整える導線でもあります。
この流れの中に
“視覚的リズム”と“緑の抜け感”を
設計することで、
暮らしの質は格段に高まります。
たとえば、
玄関ポーチから垣間見える植栽、
リビング越しに広がる庭の奥行き、
外構塀の隙間から漏れる光と風。
そうした「断片的な風景」が連続することで、
空間全体にストーリーが生まれ、
それが住まい手の
心理的な落ち着きや
高揚感に繋がるのです。
また、
駐車スペースの配置や
アプローチの素材選定も、
単なる利便性ではなく
、建物全体の“静けさと品格”を
決める大切な要素です。
やまぐち建築設計室では、
こうした外構設計を
“リビングの舞台装置”として捉え、
住宅全体の設計と
一体化させてご提案しています。
【第5章】 視線・光・風・音の“見えない設計”
リビング空間における「快適さ」の
根幹には、
目に見えない要素——。
視線・光・風・音——があります。
たとえば、
庭の向こうに見える山並み、
隣家を避けるように導いた視線の抜け、
風の通り道として配置した高窓、
樹木が風に揺れることで
生まれる柔らかな音環境——。
これらはすべて、
計画の初期段階から
“設計”されるものです。
音や光といった一見
“偶然”に感じる現象も、
きちんと考え抜かれた空間設計の中では、
自然と暮らしの一部として
機能していきます。
やまぐち建築設計室では、
これら見えない要素の「感じ方」までを
想像しながら設計を行い、
図面に表れない“感性の質”こそが、
空間の美しさと
心地よさの源であると考えています。
【結び】 風景が暮らしに入り込む住まいという思想
“風景を取り込む”という言葉には、
単なる眺望の良さや
景色の美しさを超えた
「暮らしへの寄り添い」が含まれています。
自然と建築が共鳴し、
日々の所作がひとつひとつ
丁寧になるような、
そんな住まいを実現するために——。
リビングという空間に 庭、
中庭、外構、そして“見えない
空気感”までもを織り込み、
その家にしかない
風景を設計しています。
やまぐち建築設計室の設計が、
あなたの毎日の暮らしに
美しい風景を添えるものであることを願って。
本記事に関連する施工事例や設計実例は
オフィシャルホームぺージに。
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プロフィール欄にてご紹介しています。
やまぐち建築設計室は
その家に暮らす家族の過ごし方を
デザインする設計事務所です。
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