伝統工法の欠点

ユーザー エヌスペースデザイン室 佐藤 直子 の写真

一般的な木造在来工法にくらべ、大きな梁や太い柱で形成される伝統工法は、
新築ではわずかになっていますが、古民家改修などで味わい深い店舗などにされることもあります。
大きな違いは基礎がないことです。
地面に緊結されていないため、大きな地震には地面からずれながら力をいなし、
建物の損傷をへらすという免震の役割を果たしています。
今回のテーマ、欠点については、
まず、大断面木材の入手です。規格寸の流通品に比べやや高額になる場合があります。
そして、金物を使わないため、仕口や刻みなど高度な大工技術も必要になり、
高齢化による職人不足は否めません。
また、限界耐力設計法による構造計算も、今の木造在来の軸組計算より高度になります。
木材や土壁の耐力をを数値化したデータは出ていますが、軸組計算のような
簡易なものはまだできてはいません。
他の欠点は、断熱性能をどこで持たせるかでしょう。
せっかくの柱や梁の構造美を生かすためには、外壁の外張り断熱や、屋根断熱を主に考え、
サッシの性能、パッシブソーラーなど、かなり詳細な設計やおさまり図の工夫が必要です。
結果、坪単価はのしてしまうことになってしまいます。
神社仏閣でしか建てられなくなってしまえばそれはとても残念。
まだ残る伝統工法の住まいを、大切に今風にアレンジして住み継ぐことが、
新築より価値あることと考えます。

不要になったカウンター材を框に再利用した玄関

リビング

釜屋といわれる低い2階の床をなくして吹き抜けに
足固めや敷居を造り直し、床を下げることで低い天井を高く。
足元は新たにがっちり固めました。