崖条例と擁壁

ユーザー 岩間誠治一級建築士事務所 岩間誠治 の写真

建物を建てる際には、様々な決まりをクリアしたうえで設計が進み、建物は作られていきます。
様々な決まりとして大きなものは建築基準法がありますがそのほかに、各都道府県で定められている条例、さらには地域単位で定められている地域地区の規定等があります。

今回のテーマとしてなっている崖条例は、都道府県で定められている条例です。各都道府県内容は似ていますが異なるものとして崖条例が定められています。全般的には2mを超えるがけの際には条例をクリアする必要が出てきます。
内容としては崖の角度や高さ、地質、崖と建物の配置関係について定められており、崩れる恐れのある崖には擁壁を作ることや、安息角という崩れの発生しにくい角度内への杭や基礎の支持等が定められています。

では、崖地の場合実際はどのような対応が必要となるかですが先述した擁壁を作ることが一般的で擁壁が作られたうえで売られている土地もあります。当然ですが擁壁は自然のものではなく人間が作ったものなので、それぞれいろいろな擁壁があります。古くはお城で使われているような石積擁壁から最近では鉄筋コンクリートによる開発許可を受けた擁壁があります。
昨今の擁壁は構造計算や確認申請という行政のチェックも入っているため特段問題はありませんが、古い擁壁のある敷地はとても注意が必要となってきます。
例えば、バランスボールのようなものに人が座るとバランスボールは変形して横に広がります。建物も同じく、地面に建物が乗ると地面は圧迫され横へと逃げる力が発生します。その力が平坦地では地面内で解消されますが擁壁のような高低差がある際は、擁壁へと力がかかってきます。そのため擁壁の安全性は建物を計画する際にしっかりと確認する必要が出てきます。
とはいえ、すでに立っている擁壁を壊さずに確認することはとてもむづかしく、不安も残ります。
そのような際は、擁壁に負担がかからないように前述した安息角という角度内へ支持をする建物を計画することで擁壁問題をクリアさせます。

擁壁は工作物という作られたもののため誰かしらの所有者が存在します。
上記では擁壁は自身の土地のものとして記載しておりますが、崖下の場合、崖上の土地所有者のものとなる場合が多いため対策ができなくなってしまうため注意が必要です。

擁壁は人が作ったもののためメンテナンスが必要にもなりますし、長期的に見れば作り変える必要も出てきます。擁壁のある土地は割安で購入が可能ですが、メリットデメリットをしっかりと理解したうえで購入することが必要です