古民家再生の費用

ユーザー 青井俊季建築設計事務所 青井 俊季 の写真

「古民家」の定義はありませんが、一般には昭和初期以前、多くは大正期以前に建てられた、木造の住宅を「古民家」と呼んでいます。
現代の木造住宅との一番大きな違いは、構造の方式です。現代の構造は木造軸組工法(在来工法)と呼ばれ、土台や柱を鉄筋コンクリート造の基礎にボルトでしっかり固定し、筋かいや構造金物を用いて、耐震構造をつくる方式です。一方の古民家は、木造伝統工法(石場建て工法)と呼ばれ、柱は自然石の玉石基礎に直接立てられ、太い柱と梁を仕口と呼ばれる加工により、強固なフレームを造り上げ、壁は柱を貫通する貫材と竹小舞でつくられた下地に、土塗り壁という方式です。
 
古民家再生にかかる費用は、建てられてからの年数、屋根や構造部分の傷み具合によって、かかる修繕、耐震改修費用が異なります。また、どのような仕上素材や設備を用いて、どこまで再生するかによっても、費用は大きく変わってきます。
 
写真の事例は、大正初期に建てられたと推定される、瓦葺きの古民家ですが、床と壁の大部分を一度撤去して、傷んでいた構造部分の補修、構造材の入れ替え、追補、一部鉄筋コンクリート造のべた基礎、床下防湿土間コンクリート、屋根瓦の葺き替え、などを施しました。
開口部は複層ガラスの建具、床、壁、天井には断熱材をしっかり入れた上で、温水式床暖房も設置しています。
外部の既存で残せる壁の漆喰は補修し、裏周りと2階部分には杉板を張り、内部は珪藻土塗壁、一部土間形式の床は大判タイル貼り、既存レベルの床には桧のフローリングと畳の入れ替えという仕上です。
 
この程度の内容で、工事費は坪あたりの単価で50万円程度かかりました。
大きな目安ですが、構造や基礎はもともとあったものを利用・修繕して再生するので、ゼロからの新築に比べれば、安い費用で実現できると言えるかもしれません。
(ただし古民家再生費用としては、工事費の他に設計監理料がかかります。)
 
工事費を左右する要素は上記の他にも、工務店の特性(古民家再生の経験量)、地域差、建築時期の社会情勢などもあります。
古民家再生に限りませんが、現在生じている新型コロナによるウッドショックは、木造住宅の建築コストに大きな影響を与えています。

古民家再生の事例:小浜の家
https://aoitoshiki.com/works/obamanoie-renovation/