軒の深い家で困ること

ユーザー 木の家プロデュース 明月社 山岸飛鳥 の写真

 最近、都市部で建てられる家にはほとんど軒がありません。しかし、こうした軒無し住宅の雨漏り事例も多く、日本の気候には軒が出ているほうが良い、というのは定説です。では、なんで軒無し住宅が多く建てられているのでしょう。
 
 ひとつには非常に現実的ですが、隣地との距離が近いため、軒を出したら越境してしまうというケースが多いことがあります。この場合は、軒先付近の防水を念入りにして軒無しにするしか手はありません。
 もうひとつには、軒無しのほうがカッコよく見えるからです。とくに3階建ての場合、中途半端な軒は非常にデザインしにくいものです。軒無しでキューブにした方がスッキリして見えるのです。

 この家は2階建てですが、屋上庭園をつくるなどの諸条件を満たすと、何回シミュレーションしても軒無しのほうがキレイに見えるので、このような形になりました。
 
 とは言え、やはり雨が多い日本では、軒は無いよりはあった方がいいのは間違いありません。長い目で見れば外壁の劣化には差が出るはずです。
 ですから、条件が許せば私も軒を深くとるようにしています。
 

 広い敷地に1.5階建て(2階は小屋裏)というこの家の場合、ほとんど迷うことなく軒の深いデザインに決まりでした。
 玄関ポーチも深くとるために、斜材で支えています。

 こちらも広い敷地ですが、実は左右はあまり余裕がありません。それでも地域的に軒有りがしっくりきました。

 まったく別の用途で軒を深くするケースもあります。この家は大阪駅からも歩けるくらいの場所にあり、プライバシーが最大のテーマでした。右側が南なのですが、あえて平屋を目隠し代わりに配置して、中庭を挟んで左側がリビングになります。そして、上からの目線を遮るために深い軒(バルコニー)を作っています。

 リビングの中から見るとこんな感じです。深い軒の裏と、向かい側の平屋でしっかり南側からの目線が切れているのが分かります。
 
 しかし、、、ここで大問題が発生しました。暗いのです。
 せっかく中庭をとっているのに、深すぎる軒は目線だけでなく光まで遮ってしまうのです。これはこの家ばかりではありません。落ち着いた雰囲気を出そうとして低く長い軒を作ると、その蔭になった部屋の中は想像以上に暗くなります。
 この家では苦肉の策で、2階の廊下を一部透明にして、2階の窓からの光を取り入れました。
 
 このように、深い軒は条件が許せばデザインも効能もあるものですが、光のコントロールは気をつけなければなりません。
 
 今週末にも、奈良県大和高田で軒のある家ができあがります。11月17日と18日に完成見学会をやりますので,ご希望の方は下記までご連絡ください。折り返し地図などをお送りします。
 info@mei-getsu.com 山岸