住まいとして快適で安全なグループホーム・居アーキテクツ一級建築士事務所 上野康子さん


 
グループホームは住まいとして快適で安全な空間をつくり、そこに加えてお世話をするスタッフの方々が使いやすく、安心して入居者さんたちをみることが出来るようにすることが大切です。
 
居アーキテクツ一級建築士事務所 上野康子さんにグループホームについて伺いました。
 

お話を伺った建築家

 

ユーザー 居アーキテクツ一級建築士事務所 上野康子 の写真
埼玉県さいたま市浦和区仲町2-17-19
048-615-3619

 

グループホームとは何ですか?

 
家族と共に生活したり、一人で生活することが困難な人たちが、必要な援助を受けながら、共同で暮らすことができる住まいです。
 
私が設計させていただいたグループホームは、いずれも知的障がいのある人たちのためのグループホームでした。
知的障がい者の場合は、両親や家族が高齢になって介護や養護が出来なくなったり、身寄りがなくなってしまった場合でも、一人で生活することは難しい方たちです。
 
そうなってしまう前から、グループホームに入り、自立できるようにしていく目的で入居する方が多いようです。
ですが現状ではまだまだ、受け入れ可能な人数よりも希望者の方が多い状況で、これからもグループホームを作っていく必要があります。
 

 

貴社がグループホームを手がけたきっかけがありましたら教えて下さい

 
知人に、障がい者支援のNPO法人を運営されている方がいらっしゃいました。
就労の場としての作業場はあったのですが、グループホームをぜひ作りたいという希望があり、建物の部分について相談を受けたことがきっかけで、その延長線で設計のお仕事を請けることになりました。
 

グループホームの間取りを考える際に気をつけていることを教えて下さい

 
第一には、人が暮らすための「住まい=住宅」であるということを大切にしています。
住まいとして快適で安全な空間をつくり、そこに加えてお世話をするスタッフの方々が使いやすく、安心して入居者さんたちをみることが出来るようにするにはどうすべきかを考えています。
 

 

グループホームにはなにか基準があるのでしょうか?

 
障がい者グループホームの場合については、障がいの程度や入居人数によってさまざまな法基準が変わってきます。
建築基準法上では、用途が「寄宿舎」になる場合と「児童福祉施設等」になる場合があります。
 
いずれにしても一戸建ての住宅とは異なり、特殊建築物となるので、要求される性能が変わってくることがあります。
また規模が大きくなると、バリアフリー法や福祉のまちづくり条例の対象となるので、移動円滑化の基準(階段や廊下や出入口など)が付加されます。
 
消防法上では、スプリンクラー設置が義務付けられるようになりました。
  

グループホームの設計で気をつけているポイントを教えて下さい

 
やはり身体が弱かったりアレルギーのある方も多いので、より住まいとして快適で健康であるよう、陽ざしの取り込み、風通しのよさ、自然素材の採用をこころがけます。
 
ご自身で歩ける方でも、体力が無かったり力の弱い方が多いので、軽い力で操作できるよう器具や形状などについても検討を行います。
お世話する方にとって、常に入居者の方々の様子が分かるようなプランや開口の取り方を重視します。
 
また障がいには個性がありますので、保護者の方やお世話する方々からのヒアリングが一番重要です。
ですので普段の生活現場にお邪魔して、どんな様子で生活されているか見学させてもらう機会を作るようにしています。
 

 

グループホームの補助金の手続きなども手伝っていただけますか?

 
国、県や市の補助金を貰って計画される場合が多いかと思います。
もちろん助成金手続きのサポートもさせて頂いております。
 

グループホームを開業したいがなにからはじめたらよいかわからない方の相談にも乗っていただけますか?

 
はい。相談をお受けいたします。
建築関係のことについては私自身が、法人設立や運営に関することは経験者の方と共にアドバイスをすることも出来ます。
 

「グループホームひなぎく」の依頼者からはどのようなご希望がありましたか?

 
基本的なことですが、助成金を貰うため特に、予算内に納めること、スケジュールに確実に乗せること、助成金や入札の対応をすること。これらについては希望条件がしっかりありました。
建築計画については、必要十分な範囲でのバリアフリー化、入居者とショートステイ(一時利用者)との区分けをしっかりすること、掃除のしやすさ(特にトイレ)、食品庫や管理人室の守備(ロック)などのご要望がありました。
 
ですがその他のことについては、「少し規模が大きくなった住まいと考える」というこちらの姿勢に共感していただき、基本的にお任せしてくださり、こちらの提案に対する同意を確認する形で進めました。
 

 

その希望をどのように叶えましたか?

 
定期的に行われている法人の理事会に合わせて、設計打合せも定期的に実施。その都度、工事費とスケジュールの見直しを提示しながら進めました。
建築計画の部分では、法律や一般的に定められている寸法や仕様に頼るのではなく、実際に障がい者のみなさんが生活されている作業所や、グループホームに見学に行って使われ方を確認したり、世話人さんや親御さんからのヒアリングを元にして、設計を行いました。
 

グループホームひなぎく・配置図

↑グループホームひなぎく・配置図

グループホームひなぎく・平面図

↑グループホームひなぎく・平面図

貴社が設計するグループホームの特徴を教えて下さい

 
光と風が通り抜ける、五感にやさしい自然素材の空間とするなど、まず住まいとして快適であることを第一に考えます。
つぎに、生活が楽しくなる仕掛け、世話人さんたちがスムーズに動ける動線、安心できる視線のコントロール(通り抜け・あるいは遮断)をつくります。
そして、景観的・空間的に地域に貢献する建物として、地域の人たちとの交流もはぐぐむグループホームとなるよう配慮しています。
 

居アーキテクツ一級建築士事務所 上野康子さんのグループホーム・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
グループホームひなぎく

知的障がいを持つ女性のためのグループホーム。
中庭を囲むコの字プランとして、東、中央、西と3つのゾーンからなります。
中央棟は、東棟と西棟をつなぎながら皆が集うオープンリビングになっています。

紙ふうせんグループホーム

障害を持つ人たちのグループホーム。
ご家族の元を離れて、ご自身でくらしていく為のすまいです。
梁をあらわしにして木の素材感を出したり、外観そして階段や水周りには色やデザインの遊びを加え、ここでのくらしが楽しくなるようにという思いを込めました。

 

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