渡辺篤史の建もの探訪ー3つの坪庭がある家 (今城敏明+今城由紀子、イマジョウデザイン事務所)

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感想: 

先週末、2歳児用の机を作ってみた。
私がデザイン(というほどでもないが)、夫がギコギコトントン。
椅子はまだ、お人形が入っていた空き箱。
それでもなかなかいい塩梅だ。
 
             ◇ ◇ ◇
 
今回の建ものは「3つの坪庭がある家」。
http://www.tv-asahi.co.jp/tatemono/backnumber/#!/2016/9
上質でとても静かな美し建ものだった。
 
             ◇ ◇ ◇
 
番組HPでの紹介には、建築家は言葉を選ばれていた。
”心地よい静かなBGMのように、一定のリズムやトーンを持ちながら
生活の背景となる住宅を目指してデザインしました。”
まさに。
 
真っ白な壁と、色と木目がとても美しいチェリー材の床、
風と視線が通る心地よい大きさの窓、坪庭で揺れる葉っぱ、
鉄で造作された階段、つや消しステンレスのキッチン作業台、
真っ白なタイル張りの浴室、、、、。
建ものの要素ひとつひとつが心に残った。
美しい素材が丁寧に使われていて、とても清らかな雰囲気だ。 
美しいけれど、あくまで背景。
華美ではないけれど、豊かな優美さがあった。
 
毎日、とても穏やかな気持ちで淡々と暮らしを営むことができる、
そんな気がした。
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
建て込んだ住宅地だけれど、平面を凸凹にして3つの坪庭をつくることで、
隣との間に心地よい「間」をとっていた。
視線が抜け、光や風が十分に取り込まれるようになっている。
 
この凸凹平面による空間のまとまりもとても心地よく、
住みやすそうだった。
  
2階は23畳のワンルームになったLDKだ。
ワンルームだけれど、凸凹平面がつくる「ずれ」によって
キッチン、ダイニング、リビング、テラスのそれぞれのエリアには、
少しずつ壁に隠れた部分ができている。
広がりがありながら、それぞれが小さな一部屋のような居心地だ。
 
3階は3人の子供それぞれの個室がある。
それぞれ独立した部屋になっているけれど、
坪庭に面する窓を介して、ちょっと顔が見えるその繋がりが嬉しい。
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
それぞれのエリアのまとまりという点では、
キッチンがとても印象的だった。
 
L字型になったセミクローズ型。
ダイニング側には広く開いているけれど、
冷蔵庫やトースターなどの家電、食器類のための作業台兼収納は
ひとつ奥まったL字の先にあって人目につかず、
とてもすっきりとした印象だ。
 
坪庭に面した大きな窓もあって明るい。
そんなふうに、キッチンというひとつの部屋のようでいて、
キッチンからダイニングやリビングにも十分気を配れる。
3人の子供たちだけではなく、訪ねてきてくれた人たちも
気軽にキッチンに入ってお手伝いができるような十分な広さと解放感が
とても使いやすそうだった。
 
そして、美しかった。
先にも少し書いたけれど、作業台はつや消しのステンレス。
壁には小さな白い四角いタイルが貼られている。
白みがかったステンレスの白と収納棚の白、
そしてタイルの少しキラキラした白が
なんとも清潔感があって垢抜けていた。
 
             ◇ ◇ ◇ 
 
凸凹平面3つの坪庭、という特徴はあれど、
あっと驚くような間取りや構造でもない。
暮らしの背景になる建ものだから、強くない。
でも、とにかく、ひとつひとつが静かで美しかった。
 
建築事務所のHPには、こんな言葉が選ばれていた。
”素材の持つ力を弱めることなく形にしたい。”
そんな作品を、ずーっと眺めていたいような気持ちでいっぱいになった。