患者さんの緊張感を和らげる歯科診療室のある医院併用住宅・更田邦彦建築研究所 更田邦彦さん

医院を開業する際に医院併用住宅とすることで、地域への密着度が高く、地域住民にとって安心感にもつながります。
また、通勤時間を少なくすることができます。
 

 
医院併用住宅について更田邦彦建築研究所 更田邦彦さんに伺いました。

お話を伺った建築家

 

ユーザー 更田邦彦建築研究所 更田邦彦 の写真
世田谷区代沢4-40-10サクラB
03-3487-0742

貴社が医院併用住宅の建物を手がけたきっかけがありましたら教えて下さい。

 
中学時代の同級生から、「親世代から開業している歯科医院と併用住宅を建て直して、歯科医院+二世帯住宅としたい」という依頼があったのがきっかけです。
 

医院併用住宅の間取りをつくる際に注意しているポイントを教えて下さい

 
患者さんの動線と医院スタッフの動線を明快にして、医院部分の表となるエリア(患者さんが使うエリア)と裏になるエリア(スタッフが使うエリア)を色分けします。
住宅のエントランスは医院の裏エリアから連続する動線上に設けられることになるので、その時点で医院部分と住宅部分の基本的な配置が決められます。
それら、動線とエリア分けの初期設定を最後までブレないようにすることがポイントだと思います。
 

 

医院併用住宅は住宅ローンで建てる事ができるのでしょうか?

 
住宅ローンは、住宅部分だけしか対象にならないと思います。医院部分は事業資金扱いですので、別融資になると思います。
取引金融機関に相談されることをお勧めします。
 

ハウスメーカーや建設会社とくらべて貴社に医院併用住宅を依頼するメリットを教えて下さい

 
クライアントの提示する条件や要望に対して、できるだけ多くのプランを提示して検討するということはもちろんですが、その過程で、提示された条件を疑ってみるといったことまで、踏み込んでいけることでしょうか。 
 
プランを検討する中で、与えられた条件が保守的すぎると思われる場合、少しでも革新的な方向に舵をきったものを提示していく・・
そんなところが、アトリエならではの取り組み方だと思っています。
 
例えばシノハラコンプレックスの場合、歯科診療室は道路から離れた、奥まった場所に設けてほしいという要求がありましたが、それでは、子供の頃に記憶された、あの痛くて辛い陰湿な空間イメージそのものを再現することになるような気がして、私の計画では、はじめから外光の入る道路(+駐車場)に面した位置に診療室を設けることにしました。
 
部屋が明るく、外の景色が見えることで、患者さんの緊張感を和らげることができると思いましたし、歯科用治療機器がロボットアームのようにメカニカルでカッコイイものでしたので、それが外から見えてもいいのではないかと思ったのもその理由の一つです。
 
幸いクライアントにも納得いただき、結果的にはこれまでにない、少し革新的な新しいタイプの歯科医院にすることができたと思っています。
 

 

シノハラコンプレックスは歯科医院併用二世帯住宅なのですね。なにか工夫した点がありましたら教えて下さい。

 
敷地が商業地域内にあるため、周辺は全て高密度なビルに囲まれているという環境でしたが、さらにこの場所の風景として、周辺と同様に高密度なビルの中に人が暮らすとか患者さんが通院するという姿は避けたいと考えていました。
 
クライアントからは必要以上に床面積を利用したいという要望もなかったので、1階の歯科医院、2・3階の二世帯住宅のヴォリュームを設定し、その周辺にはできるだけヴォイドとなる空間が意識できるよう形を決めてセットすることにしました。
 
全体の形は、1階の四角い台座の上に、2・3階の直方体が少しズレながら斜めに置かれているというものになったのですが、二方向が道路であり南側境界からも大きくセットバックさせたため、この建物だけが周りと切り離されて佇んでいるという風景を作ることができました。
 
周辺の高密度感から開放されたことによって、商業地域の中にホッとするような良好な住環境を作り得たのではないかと思っています。
 
それから、二世帯住宅である2・3階の直方体ヴォリュームのほぼ中央に、世帯間を最短でつなぎさらに屋上まで移動できる螺旋階段を設置するため、一辺1.8m角の筒状のヴォイドを設けましたが、それは大きな量塊の中に通風を確保するものでもあり、天空から光を取り入れるための有効な外部空間となっています。
 

医院併用住宅の土地購入前の相談にものっていただけますか?

 
敷地から検討できれば、計画全体の道筋もたてやすいので、もちろん対応いたします。
 

医院併用住宅を建てたい方になにかアドバイスがありましたらお願いします。

 
医療施設には、様々な医療機器や道具が設置・導入されますし、レントゲン室のような特殊仕様となる部屋も想定されます。
そのようなもののデータはできるだけ早い段階で、全て設計者に提示することをお勧めします。
 
機器周辺のスペースなど細かい寸法の押えが、機能的な診療室となるかどうかの決め手になりますし、建物の全体計画の善し悪しにも関わってくる可能性があります。
 

 

更田邦彦建築研究所 更田邦彦さんの医院併用住宅・設計事例

  

画像 建物の名称 紹介文
シノハラコンプレックス

敷地が、JR宇都宮駅近くの商業地域にあり、もっと大規模な計画(賃貸部分を設けるなど)とすることも考えておられましたが、必要最小限の規模とすることになり、周辺の大きな建物に囲まれながらも、敷地全体に余裕を持たせる配置計画となったことが、この環境において魅力的な建物になったように思われます。

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